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「姫様、どうかお許しください!!」
その場に座り、柚子に深々と頭を下げた。
額が地面に、べったりとついている。
「拙者も鬼道信虎に逆らえず断腸の思いで裏切ったのです! どうか、どうか命だけは!」
「わし」が「拙者」に変わっている。
伝兵衛に誇りなど無い。
生き残れるなら何でもやってのけるだろう。
土下座しながら、伝兵衛はちらりと上を見た。
柚子の様子を窺うためだ。
が。
伝兵衛が見たものは大男の大きな手のひらだった。
伝兵衛は頭を掴まれ、天に高々と持ち上げられた。
「ひーっ!!」
情けない悲鳴が洩れた。
大男は伝兵衛の頭を一瞬で握り潰した。
伝兵衛の死体が草むらに落ちた。
「さあ」
童女が言った。
「片づいたね」
辺りを見回す童女の視線が殺された大虫の死体で止まった。
「ふふん」
鼻で笑った。
「変わった奴だね。面白いから見逃してやるよ」
大虫の死体にそう言うと、今度は柚子の顔を見た。