表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冥伝  作者: もんじろう
169/180

169

 女が微笑んだ。


「決まりだね。お前には新しい身体をやるよ。あとは」


 女が、ふっと息を吹いた。


 女の顔の横にもうひとつの顔が現れた。


 童女の顔だ。


 全てが女の顔と酷似している。


 女を若くした顔だ。


「こいつをつけてやるよ。これはあたしの一部。分身みたいなものさ。力はたいして無いけど、お前をサポートさせる。まあ、サービスってことだよ」


「馬鹿だね」


 童女が口を開いた。


「サポートとかサービスとか…この時代の奴には分からないんだよ」


「ちっ」


 女が舌打ちした。


「分身のくせに生意気な。ちゃんとこいつの面倒を見なよ」


「言われなくても仕事はきっちりするよ」


「はあ」


 女がため息をついた。


「かわいくないねぇ。本当にあたしの分身かしら?」


 女が武丸に目を向けた。


「ああ、そうだ。元の場所に戻っても、お前の身体は以前とは違う。お前の正体は姉さんには知られちゃいけないよ。誰かに正体を気づかれたら、その時点で契約終了になる。お前はもう死んでるんだからね」


「はい…」


 武丸が頷く。


「その辺は、あたしが厳しくするから大丈夫さ」


 童女が言った。


「任せたよ」


 女が返す。


「それじゃあ、そろそろあっちの世界に戻してやろうか。姉さんも危ないようだしね」


 映し出されている柚子は伝兵衛にのしかかられ、乱暴されようとしていた。


「姉様っ!」


 武丸が叫ぶと同時に視界が真っ暗になった。


 伝兵衛に殺害されたときと全く同じだ。


 ほどなく辺りの景色が見えてきた。


 武丸の前の身体よりも高くなった視点から、足元に居る柚子と伝兵衛が確認できた。


「やや…」


 伝兵衛が気配に気づき、こちらを向いた。


「な、何やつ!」


 伝兵衛が、うわずった声で訊いた。


 組み伏されている柚子も武丸を見ている。


 武丸と柚子の眼が合った。


「がああああああああっ!!」


 武丸が雄叫びをあげた。


 以前の武丸とは比べ物にならない、恐ろしく醜い声だ。


 しかし、武丸の声よりも何十倍も大きな、大気を震わす声であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ