表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冥伝  作者: もんじろう
164/180

164

 信虎に言われるまでもなく、信竜は倒れた骸のそばに立った。


 大刀が閃く。


 柚子へと伸ばした骸の左腕が、手首の部分から斬り落とされた。


 苦痛にうめく骸。


 しかし、前進はやめない。


 信竜が骸の前に移動した。


 骸からは、信竜に遮られ柚子の姿は見えなくなった。


 が、まるで信竜の身体を見通して後ろを見ているように骸は必死で進んだ。


 醜いぼろぼろの顔が必死の形相でさらに醜くなっている。


 信竜は骸の顔を見た。


 その眼を正面から見つめた。


(何故だ)


 信竜は思った。


(俺はこの眼を以前にも見たことがある)


 初めて骸に遭遇したときの感覚は確信に変わった。


 しかし何処でいつ見たのか?


 それが思い出せない。


 信竜の胸中に広がる感情は嫌悪ではなく、穏やかなものだ。


 外見は恐ろしい怪物の骸が、どういうわけか敵とは思えない。


(何故だ!!)


「信竜っ!!」


 信虎の怒号が信竜の思考を中断させた。


「早く殺せ!!」


 信虎の刀が柚子の首に薄い傷をつけ、血が流れだす。


 信竜は雑念を捨てた。


 大刀を大上段に構え、骸の頭へと一気に振り下ろした。


 鋭い風切り音と共に信竜の斬撃は骸の頭部を真っ二つに割った。


 骸は地に伏せて。


 動かなくなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ