163/180
163
骸の身体は異常な再生力を持っている。
並の刀の攻撃であれば刀身が肉を断ち、左脚を切断する前に最初の傷が塞がり、何ら効果を現さなかったであろう。
変わらない勢いで信虎と柚子へとたどり着いたはずだ。
しかし、信竜の大刀は魔祓いの力がある。
骸の左脚へと吸い込まれた刀はやすやすと肉を断ち、信竜の技量も相まって、あっという間に太ももを切断した。
「がーーーっ!!」
骸が苦痛の叫びを上げた。
片脚では進むこと叶わず、どうっと転倒した。
「うがっ」
すぐに立ち上がろうとしたが、左腕、右脚だけでは上手くいかない。
再び地面に倒れ、顔面をしたたかに打ちつけた。
倒れたまま顔を上げると、骸の手が届く範囲に信虎と柚子が見えた。
「があっ!!」
意味をなさない声を発し、骸が柚子に手を伸ばす。
柚子を抱えた信虎は、慌てて後ろへ退がった。
骸の手に掴まれては、ひとたまりもなく柚子を奪われる。
「信竜っ!!」
信虎が苛立ち、息子を呼んだ。