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冥伝  作者: もんじろう
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 骸の身体は異常な再生力を持っている。


 並の刀の攻撃であれば刀身が肉を断ち、左脚を切断する前に最初の傷が塞がり、何ら効果を現さなかったであろう。


 変わらない勢いで信虎と柚子へとたどり着いたはずだ。


 しかし、信竜の大刀は魔祓いの力がある。


 骸の左脚へと吸い込まれた刀はやすやすと肉を断ち、信竜の技量も相まって、あっという間に太ももを切断した。


「がーーーっ!!」


 骸が苦痛の叫びを上げた。


 片脚では進むこと叶わず、どうっと転倒した。


「うがっ」


 すぐに立ち上がろうとしたが、左腕、右脚だけでは上手くいかない。


 再び地面に倒れ、顔面をしたたかに打ちつけた。


 倒れたまま顔を上げると、骸の手が届く範囲に信虎と柚子が見えた。


「があっ!!」


 意味をなさない声を発し、骸が柚子に手を伸ばす。


 柚子を抱えた信虎は、慌てて後ろへ退がった。


 骸の手に掴まれては、ひとたまりもなく柚子を奪われる。


「信竜っ!!」


 信虎が苛立ち、息子を呼んだ。

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