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冥は幻斎を引き当て、骸は。
柚子を発見した。
仲間を潰され、驚きのあまり金縛りのように動けずにいた兵たちのすぐそばで、骸はのっそりと身体を起こした。
骸の背丈なら、兵たちの向こうに居る柚子の姿は見通せる。
「があーーーーっ!!」
歓喜の叫びが骸のぼろぼろの口から発せられた。
その場の者たちの鼓膜を破りかねない大声だ。
これによって、逆に人々は覚醒した。
何人かの兵は骸のおぞましい姿に恐怖し、陣の外へと逃げだした。
踏みとどまった兵たちは信竜のことなど失念して、突如、出現した新たな敵に武器を向けた。
骸も柚子への進路を遮る兵たちに気づいた。
骸の左腕が大きく振り上げられる。
巨体のわりには素早い動きで、自らの前方を打ち払った。
骸の手のひら、腕が直撃した兵は、まるで体重が無くなったかのように空中へと舞った。
その場で高く上がり地面に激突する者もいれば、陣幕の外にまで吹っ飛んでいく者もいる。
ひと振り。
ふた振り。