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冥伝  作者: もんじろう
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「お前みたいな奴は、ごまんと知ってるよ! 自分が特別だと思ってたのかい!?」


 喋りながら、冥の老人の身体が童女のものに戻っていく。


「全部の時代を引っくるめりゃね、お前の力なんざ、たかが豆つぶくらいのもんなんだよ! 噛みつく相手を間違えたようだね!」


 幻斎の左手が腰の刀を抜いた。


 刃を走らせた先は冥ではなく、自らの右手だ。


 もはや冥から手を引き離すのは無理と判断し、己の右手を切断して逃げる決心だった。


 高速で振るった刃先は幻斎の右手首に、あとほんの少しのところでぴたりと止まった。


 幻斎の意志ではない。


 突如、全身の筋肉が硬直し、自由が利かなくなった。


 幻斎の危機の予感は当たった。


 今や彼の生命は童女の姿をした恐ろしい敵の手中にあるのだ。


「次はあたしの番だ。お前の力をもらうよ」


 冥が言った。


 幻斎の身体が落雷に打たれたように大きく痙攣した。


 先ほどとは逆の現象が起こり始めた。

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