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冥伝  作者: もんじろう
153/180

153

 小さな老女、冥の顔面を掴んでいるのは、もはや老人ではなく青年忍者、幻斎であった。


 大山城から柚子を拐った男。


 その正体は若返った幻斎だった。


 若き幻斎の口元が緩んだ。


 老人の幻斎は全く見せたことのない、感情の発露だ。


「さらばだ」


 幾人もの手下を惨殺された敵を片割れとはいえ、自らの手で倒したことへの満足か。


 確かに幻斎は笑っていた。


(信竜は信虎様のところへ向かったか?)


 急がねばならない。


 冥の頭を離して、その場に打ち捨てようとした。


 が。


「むっ?」


 離れない。


 右手のひらが冥の顔から少しも動かない。


 何か強力な力で張りついている。


 幻斎の顔が歪んだ。


 背筋に氷柱を差し込まれたような感覚に襲われたのだ。


 何度か味わったことのある感覚。


 死の危険が迫ったときの警鐘が頭の中で、がんがんと鳴り続けていた。


 右手を離さなければ死ぬ。


 忍びの本能が、そう言っている。


 だが離れない。


 それどころか、それほど体重がないはずの冥の身体が、まるで鉄の塊の如く動かない。


 本来なら簡単に持ち上げられるはず。


 離れずとも、童女の細く頼りない首を折ることも可能であろう。


 しかし、動かない。


「あははははは!!」


 顔面を掴まれた冥が笑った。


 幻斎の耳を突く、けたたましい笑い声だ。


 老女の容姿から発せられたが、元々の声。

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