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童女でありながら、大人の女のような妖しい色気を漂わせているのだ。
横一線に切り揃えられた前髪の下には薄い眉が覗いている。
前髪以外は顎下の辺りまでの長さで、これもまた切り揃えられている。
死人のごとき青白い顔に、形の良い鼻と紫色の紅をさした唇。
もっとも目を引くのは今も伝兵衛を見つめる、その両眼だ。
大きく、月明かりの下でひときわ強い光を放つ。
猫科の獣にそっくりな眼だ。
そして艶かしい。
童女は紫色の着物に身を包み、黒い下駄を履いていた。
「あたしは」
童女の声は大人の女のそれであった。
「悪党は嫌いじゃない。それなりに役に立つからね」
伝兵衛に言っている。
言われた伝兵衛は声もない。
混乱していた。
口を開けたまま、童女の顔をただただ見つめている。
「だけど、お前はまるで駄目だ」
童女は続けた。
「特に顔がまずいね」
そう言って、にやーっと笑った。
「お前をどうするかは柚子に決めてもらおうか」