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それぞれの喉には、かがり火を反射して光る手裏剣が深々と突き刺さっている。
空中を駆ける幻斎の手から、侍たちの鎧の隙間を正確に狙って放たれたものだった。
幻斎の身体は、まだ空中にある。
それほど、一瞬の早業であった。
ただ、幻斎の手から放たれた手裏剣は全部で七つ。
そのうち、中央の侍に向かったひとつだけが目標へと到達しなかった。
侍が己の刀を抜き、見事に手裏剣を弾き返したのだった。
侍は抜いた刀をそのまま斜め上に突き出した。
迫ってくる幻斎を串刺しにしようとする動きだ。
幻斎は顔色ひとつ変えない。
腰の刀を抜き、侍の突いてくる刃先をがちっと受け止めた。
攻撃をうまく反らせた幻斎が侍のそばへと着地する。
「ちぃ!!」
侍の口から気合いが洩れ、苛烈な一撃が幻斎の首をはね飛ばす。
かと思われた一瞬。
幻斎は地を這うように体勢を低くして、敵の刀を空振らせた。
幻斎が蜘蛛の動きで後退り、侍と距離をとる。