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四本の手裏剣は外れることなく、老侍の急所に突き刺さった。
「うっ」
老人が、うめいた。
前のめりに倒れる。
老侍の後ろに男が立っていた。
若い男だ。
右眼に黒革の眼帯をつけている。
忍び装束を着ていた。
男は無造作に部屋へと、一歩踏みだした。
その刹那。
天井板が開き、四つの影が怪鳥のように飛び出した。
天井裏に伏せていた忍びたちである。
横並びになった四人の忍びは、白刃を手に若い男に襲いかかった。
「おおっ!!」
「ぐっ!!」
口々にうめき、倒れたのは四人の忍びのほうだった。
恐ろしい早業で侵入者が斬り伏せたのだ。
その右手にはやや短い刀が握られている。
しかも若い男の斬撃は的確に四人の忍びの急所を捕らえていた。
皆、即死であった。
四人を斬ったことに何の感情も見せず、若い男は歩を進めた。
侍女の一人が柚子の手を取った。
侵入者と反対側の襖へと柚子を連れていこうとする。
残った侍女たちは敵の前に立ち塞がった。