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それが一番良いと直感したのだ。
身体は動かさず、柚子は侍女たちの視線の先を見た。
襖があるだけで何の異常も感じられない。
部屋を移した様子はなかった。
襖の向こうには屈強な侍たちが居るはずだが。
襖が、すーっと音も無く開いた。
「!!」
室内の五人は凍りついた。
老人が立っていた。
口をだらしなく開け、両腕をだらりと下げている。
眼の焦点が合っていない。
四人の侍女の背筋を悪寒が走った。
謎の老人の身につけているものが、部屋を警護している侍たちと同じものであることに気づいたからだ。
しかし、侍たちの中に老人は一人も居なかったはず。
信竜が柚子を守るために選んだ精鋭であるから、自然と若く体力のある者が選ばれていた。
では、この老侍は何者なのか?
部屋を見張っていた侍たちは何をしているのか?
四人の侍女たちは疑問を感じながらも反射的に動いた。
この侵入者を排除せねばならない。
侍女たちの手から小型の手裏剣が飛んだ。