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信竜の隣に付き従っているのは藤十郎である。
「よし」
冥が骸へと振り向いた。
「城が手薄になる。柚子を助けだすよ」
「うがっ!!」
「しっ」
冥が指を一本、口の前に立てた。
「静かにおし。誰かに気づかれたら、どうするんだよ」
「うー」
「奴らが城から離れたら、こっちも出発するよ」
二つの影は信竜軍が全て城から出ていくのを辛抱強く待った。
柚子は目覚めた。
気を失っていたらしい。
当て身を打たれたことさえ、柚子は分かっていなかった。
最初に眼に入ったのは部屋の天井だった。
布団に横たわる身体をゆっくり起こすと、四人の侍女たちが自分の周りを囲んでいるのが分かった。
侍女たちは柚子に背を向けていた。
それぞれの手には小刀が握られ、油断ない視線で皆、同方向を見ている。
侍女たちの緊張が柚子にも伝わってきた。
「姫様、動いてはなりません」
侍女の一人が言った。
柚子はわけがわからなかったが、とりあえずはその言葉に従った。