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忍びの甲高い笑い声が洩れた。
この忍び、名を大虫という。
幻斎の命によって伝兵衛の邪魔をする者を始末するためにやって来た。
人を殺すのが唯一の楽しみという男であった。
大虫の笑いが止まった。
切断したはずの大男の首が、そのままなことに気づいたからだ。
この距離なら大虫は絶対に外さない。
「!?」
理解不能の中で大男が大虫に突進してきた。
混乱した大虫の反応が遅れる。
大男の動きは予想よりも、ずっと速かった。
太い右腕が伸び、大虫の頭を掴んだ。
そして。
大虫の頭が引き抜かれた。
大男が頭を草むらに放り捨てる。
大虫の首なしの身体はフラフラと揺れ倒れた。
大虫が殺されたことで、他の人々がようやく覚醒した。
「殺せっ!」
伝兵衛が叫んだ。
顔が真っ青だ。
三人の侍は慌てて腰の刀を抜いた。
武丸と違い、侍たちはなかなかの手練れである。
己の安全には細心の注意を払う伝兵衛が集めたのだから当然であった。
逃げだすような臆病者は居ない。