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その後、共に行動するうち、冥と骸の外見だけではない常人離れの所業を目の当たりにしても柚子は恐れを抱くどころか、むしろ家族を失ったことによる心の穴を埋めるように二人を信頼していった。
冥の「信虎に恨みがある」という言葉を鵜呑みにしたわけではない。
それでも冥と骸が柚子の仇を次々と倒してきたのは紛れもない事実であった。
柚子は二人に絆めいたものさえ感じ始めていたのだ。
信虎は冥と骸と自分の三人で討たねばならない。
もし、こうしている間にも二人が信虎を殺してしまったら…。
柚子の胸は痛んだ。
信竜とのことは信虎を討ち果たしてから考えたかった。
(何とかして、ここを抜け出さないと…)
ようやく失意を押さえ込んだ柚子は、逃走への思案を始めるのだった。
更に二日が過ぎた。
柚子の状況は何も変わっていなかった。
冥と骸が助けに来るどころか、信竜さえも姿を見せない。
城からの脱出を心に決めた柚子の瞳には活力が戻っていた。