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憎悪にとらわれていた柚子も、このときばかりは異形の大男を見た。
大男が口を大きく開けた。
「がああああああああっ!!」
怒号が大男から発せられた。
恐ろしい大声だった。
これには再びその場の人々が肝を潰した。
混乱状態と言っていい。
その中でただ一人、動きだす者が居た。
頭巾の忍びである。
頭巾の前に右手を上げるや、さっと何かを大男に投げつけた。
この頃、辺りにはすでに夜のとばりが下り始めていた。
光を強めた月に照らされ、忍びの手から放たれた物が一条のきらめきを見せた。
それは一本の鋼糸であった。
両端に重りをつけている。
重りは左右に別れ鋼糸をピンと張りながら目標へと飛んでいく。
鋼糸は刃物のような切れ味で的を切断するのだ。
この武器によって、右京の首は刈り取られた。
高速で飛来する、ほとんど見えない鋼糸をかわすのは至難の技である。
頭巾の忍びの狙い通り、鋼糸は不気味な怪人の首へと吸い込まれた。
「くきき」