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腕の次はどこを狙うのか?
大声を上げ、転がる骸の動きに狙いが定まらない。
その隙に信竜の腕にまとわりつく者が居た。
柚子だ。
「やめてっ!!」
必死の形相で信竜を止めた。
細腕を懸命に信竜の太い腕に巻きつけ、骸への追撃を邪魔する。
今度は信竜が慌てた。
「柚子様!?」
左腕で柚子を引き離そうとするが、怪我でもさせてはならないと思うがゆえに全力が出せず上手くいかない。
信竜がもたもたしているうちに冥が動いた。
疾風の速さで地に転がる骸の腕を拾い、次に骸へと駆け寄った。
冥の右手には骸の斬られた右腕が握られている。
空いた左手で骸の首根っこの辺りを掴んだ。
「あっ!!」
信竜と藤十郎が異口同音に驚きの声をあげた。
あり得ない光景を二人は見た。
童女の冥が、巨体の骸をまるで小石でも拾うようにひょいと持ち上げたのだ。
たいして力む様子も見せず、骸を自分の頭よりも上にあげた。
そして。
更にあり得ないが。