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「あたしたちと柚子はそういう仲間なのさ。信虎側のお前が、しゃしゃり出てくるんじゃないよ!!」
冥が怒鳴った。
尋常でない気迫に、信竜には冥が子供どころか大型の野獣のように感じられた。
「柚子、はっきり言ってやりな!」
冥の矛先は柚子へと移った。
「信虎はあたしたち三人が殺す。そもそも、あたしたちは信竜を殺すためにここに来たんだよ」
「………」
柚子は黙っている。
信竜に庇われたまま、ただ唇を噛みしめている。
沈黙が流れた。
四人は押し黙り、彫像の如く動かずに居た。
「驚いたねぇ」
静寂を破ったのは冥だった。
「まさか…ここまで来てあたしたちを裏切るつもりかい?」
冥の鋭い視線が柚子へと飛んだ。
裏切りという言葉に柚子ははっとなった。
依然として口は開かないが、子供のように嫌々と首を横に振った。
柚子の様子を見た信竜が顔をこわばらせる。
「柚子様を裏切り者呼ばわりとは無礼であろう」
信竜が言った。