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声の主は猫のように大きな瞳で二人をにらみつけている。
「何を寝ぼけたことを言ってるんだい」
冥だった。
信竜の行動に最初こそ面食らっていたが、今は平静を取り戻している。
「柚子様、この者たちは?」
柚子以外には目もくれずにいた信竜は、ようやく冥と骸に興味を示した。
童女の容姿に大人の声を持つ冥、巨体を包帯とぼろ布で包んだ骸、共に異様である。
柚子は口ごもった。
冥と骸は復讐の同志だ。
二人との関わりを説明するのは、これまでの自らの行いを話すことと同じである。
「あたしたちは柚子の仲間さ」
柚子の答えを待たず、冥が言った。
「まずは信虎に味方した奴らを殺し」
冥の瞳が闇にきらりと光った。
「最後に信虎を殺す」
小さな冥が体格の良い信竜を見上げる。
冥の身体から発する殺気に信竜は眼を見張った。
無意識のうちに冥と柚子の間に立ち塞がり、元々の許嫁を自らの後ろへと庇った。