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冥と骸の申し出と同じである。
真偽のほどは分からないが、冥と骸も信虎に恨みがあるという。
そして柚子に協力を約束した。
実際、今まで柚子は二人と共に信虎の手下たちを討ち果たしてきたのだ。
直接手を下すのは骸だが、その場には必ず柚子が居た。
柚子の心の中ではそれは自らが復讐したのと同じであった。
だが、信竜は柚子の代わりに信虎を討つと言う。
この申し出は、柚子が家族を失う前の姫らしい生活に戻ることを意味する。
もう血生臭い戦いの場へと行く必要が無くなり、信竜が信虎の首級を持ち帰るのを待っていれば良い。
(信竜様を信じて待つ…)
父の仇を討つという結果は変わらない。
柚子の心はぐらぐらと安定を失い、一気に信竜の提案へと傾いた。
「あはははははっ!!」
突如けたたましい、女の笑い声が庭中に響き渡った。
これには久々の再会に浸っていた柚子と信竜も無理矢理、現実へと引き戻される。
二人の顔が笑い声のほうへと向く。