10/180
10
一同から十歩も離れない位置に突如、大柄な男が立っていたからだ。
異様な男だった。
ぼろ布をまとっている。
身体が大きすぎ、布がおおっているのは胸元や腰の辺りだけで手足はむき出しだ。
男の四肢の太さは女の胴体ほどもある。
凄まじい筋肉量であった。
だが、この場の皆の度肝を抜いたのは男の体格ではなかった。
男の顔のほうだ。
生きたまま焼かれでもしたのか?
凄まじい火傷が…否、それとも違う。
ただれた顔には肉がない。
骸骨に眼を入れれば、このような顔になるだろうか?
ほとんどない唇の中に汚れた乱杭歯が覗いている。
顔には申し訳程度の包帯が巻かれていた。
首から下の身体にも包帯が巻かれており、こちらはたまに地肌が露出している。
地肌もやはり、ただれたようになっていた。
男の瞳が血走り爛々と輝いていなければ、死体が立っていると思ったかもしれない。
「やや…」
やっと伝兵衛が言葉を発した。
「な、何奴!?」