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我々とは違う世界の戦国。
夕闇の中、先を急ぐ四つの影があった。
辺りは背の高い雑草が一面に生い茂っており、四人の姿はよくは見えない。
特に先頭の二人、体格が良い侍たちはともかく、後ろに続く二人の若者は背が低くほとんど草の中に埋もれている。
若者の一人は女だった。
大きな笠で顔を隠しているが粗末な女物の着物を着ていた。
杖を持っている。
今は全力で走っているため、杖は右手に握られていた。
あまり足腰は強くないようで次第に足元がふらつき、息が荒くなっている。
「姉様」
もう一人の若者が後ろから心配そうに声をかけた。
こちらは男子である。
侍の出で立ち。
歳は十代前半か。
整った顔はあどけなさを残している。
「姉様」と呼んだ娘と同じく、あまり体力は無いのか苦しそうだ。
先を行く二人の侍の一人が娘と若侍の様子に気付き、足を止めた。
その場に残り、若者二人を先に通す。
「左門?」
二人の若者が異口同音に言った。
二人も止まろうとする。