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九十一話 VSドラゴン

 女性冒険者さん――フウさんというらしい――の案内で、私たちは北へひた走る。

 背中にはミーシャを背負っており、落ちないように花の蔓で固定されている。

 走りながら、フウさんがその蔓を横目でチラッと見てきた。


「その蔓、便利そうだね。お花ちゃんの魔法?」


 いえ、身体の一部です。

 ……と言うわけにはいかないので、私は曖昧な感じに頷いておく。


「綺麗な魔法ね。あたしは魔法の才能がないから、ちょっと羨ましいわ。ま、その代わり、こっちに関しては腕に覚えがあるけどねー」


 フウさんは腰の鞘に収まった短剣の柄をコンコンと叩いて不敵な笑みを浮かべる。

 へえー、短剣か。

 そういえば、剣とか槍とかならよく見るけど、短剣を主武器にしてる人は始めて見たかも。


 ……って、当たり前か。

 私の魔法だってそうだけど、有効範囲の広い攻撃手段ほど、色々な相手に対応しやすい。

 例えばあのワイバーンに蔓や毒花粉だけで戦えと言われたら、首を横に振ったはずだ。


 短剣でBランクまでいったということは、それだけ身のこなし方が上手いんだろう。

 才能か努力かはともかくとして――。


「お花さん、お姉さん! ドラゴンが近くなったの!」


 背中からのミーシャの声で、私とフウさんは急いで北西の空を見る。

 先ほどから魔物の群れの上空を飛び回っているドラゴンが、徐々に高度を落としてきていた。


「二人とも、ちょっと急ぐよ!」


 フウさんはそう言うと走る速度を早める。

 私もミーシャを抱え直すと、足に力を込めた。


 ◇◇


 なんとかドラゴンが動き出すよりも前にバリケードの中央へ到着すると、そこにダボルスさんパーティのうち四人が集まっていた。

 フウさんと私を入れて六人か……。

 Aランクの魔物(ドラゴン)がどれほどの強さかは分からないけど、少なくともワイバーン相手に苦戦している私じゃまともな戦力にはならないかもね。


「フウ、ようやく来たか! 嬢ちゃんたちも……って『烈火』はいねえのか?」

「『烈火』ちゃんは怪我で来られないそうよ。だからこれで全員」

「そうか……。分かった、ありがとな」

「どういたしまして。今度何か奢ってよ」


 フウさんとダボルスさんが話している間に私は面々を見渡して……首を傾げた。

 あれ、王都近衛騎士団の人は?

 まだ来ていないのかな……でもこれで全員って言ってたような?


「ああ、騎士団の連中なら来ねえぞ。救護に回ってもらった」


 私の顔を見たダボルスさんがつけ足すように言ってくれる。

 ……私ってそんなに表情に出てるのかな?

 頬をグリグリと揉んでみる。

 あ、喋れないんだし、表情に出たほうがいいのか。


「今はそれより作戦だ。つっても、いつもの通りにやるしかねえけどな」

「グリットがいないのはどうするの?」

「花の嬢ちゃんに代役を頼むしかねえな。幸い魔法が得意って聞いてるしな」


 聞くに、ダボルスさんパーティが高ランクの魔物相手に組む作戦があるそうだ。

 フウさんともう一人が前衛で敵を惹き付けながら撹乱、攻撃を行い、隙をついてダボルスさんが高威力の一撃を叩き込む。

 一人は全体の指揮をとりながら補助魔法や道具を使う。

 そして残った二人が遠距離から弓矢と魔法で攻撃を仕掛けていく。

 それがダボルスさんパーティのいつもの戦略だそうだ。


 で、さきほど話にあがったグリットさん――私たちのすぐ右が持ち場だった人――は、遠距離からの魔法攻撃を担当していたらしい。


「だから、花の嬢ちゃんはここから魔法をガンガンぶっ放してくれ」


 いや、それ、間違って前衛の誰かに当たる気がして怖いんだけど……。

 ちなみに、他の冒険者たちは巻き込まれないように避難しているから、そちらの心配はない。


「タイミングはこっちであわせるから、気にしなくていいわよ。あ、でもあんまり連発して注意を引きすぎないようにねー。多分そっちに向かっていったら止められないから」


 さらっと怖いことを言うフウさん。

 うーん、やっぱりミーシャ置いてきたほうが良かったかも。


 そんなことを思ったのと同時に――ドラゴンが動いた。

 翼を広げ、真っ直ぐバリケードへ向かって飛んでくる。


「行くぞっ!」


 ダボルスさんたち五人がそれぞれ走り出した。

 ちなみに、弓使いの人は私とは離れた場所から撃つらしい。


「お花さん、頑張ろうね!」


 背中からかけられたミーシャの言葉に私は頷くと、ブーツの魔石を起動した。

 ブーツから根っこのようなものが生え、地中へと根を広げ、魔素を吸い上げる。

 吸い上げた魔素をもとに、両腕を前方へと伸ばしてウォーターカッターを二つ作り始める。


 巨大な水の刃ができあがった頃、ダボルスさんたち前衛がドラゴンに攻撃を始めた。


 フウさんは素早い動きでドラゴンの周囲を駆け回り、飛び上がって両手に持った短剣を振るう。

 もう一人の前衛の男性は、槍を器用に動かして薙いだり突いたりしている。

 少し離れたところでは中衛の女性が杖を振るいながら指示を飛ばし、ダボルスさんが絶妙なタイミングでドラゴンへと攻撃を仕掛けていく。


 ――よし、私も負けていられないね!

 私はダボルスさんが後ろに引いたタイミングで、右手側のウォーターカッターをドラゴンへ撃ちこんだ!

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