四十四話 ミーシャと合流
「で、なぜその冒険者と一緒なんだ?」
「それは村長さんを交えてお話しします。まずは村長さんに会わせていただけませんか?」
スズハさんの言葉に疑うような視線を向けるジルド。
まあ、村が襲われているんだし、用心深くなるのは仕方がない。
部外者がいきなり村長に会わせろ、なんて言っても、普通に考えて無理だ。
とはいえ、このままじゃ話が進まないか。
『大丈夫 味方』
私は手に持ったままの黒板にそう書き、ジルドに見せた。
本当に味方かどうかはまだ分からないけど、今は気にしないことにする。
「……はあ。いいだろう」
ジルドは渋々といった様子で頷き、きびすを返して歩きだす。
その後ろを着いていくと、スズハさんが隣に並んでポツリと呟いた。
「信頼されているのですね」
いや、それはないわ。
ジルドが私を信頼しているとか、考えただけで鳥肌が立つ。
精々、ミーシャの護衛程度にしか思ってないよ。
私は首を横に振るが、スズハさんは「そうですか」とだけ言って追い越していった。
ジルドに続いて扉をくぐり、村長の家へと入る。
……あれ?
以前見たときは集会所だったのに、大きな木製のテーブルがなくなり、ちょっとしたスペースができていた。
そこでは多くの女性や子ども、お年寄りが、身を寄せあっていた。
男性のほとんどは外にいるのかな?
「お花さん!」
「お花ちゃん!」
辺りを見渡していると、聞き慣れた声が聞こえる。
この声はミーシャとキャティさんかな?
声のする方へと顔を向けると、飛び付いてくるミーシャの姿が目に映った。
ちょっ!
慌てて手を伸ばして抱きとめる。
いやいや、危ないでしょ。
「お花さん! 大丈夫!? けがはない!?」
そう言いながら腕の中でモゾモゾと動いて私の身体を触ってくるミーシャ。
心配させちゃったかな?
怪我なんてしてないから大丈夫だよ。
ごめんね。
心の中で謝ったあと、いい加減暑苦しいミーシャを引き剥がし、顔を見てしっかり頷く。
「それならいいの」
「お花ちゃん。私もミーシャちゃんも、本当に心配したんだからね。あまり無茶はしちゃ駄目よ」
「ほんとなの、すっごく心配したの!」
「心配なのは分かるけど、ミーシャちゃんは騒ぎすぎよ」
「……ごめんなさい」
あはは……。
あの時は咄嗟だったとはいえ、キャティさんにも迷惑かけちゃったかな。
「随分と慕われているのですね。魔物がここまで人びとに馴染んでいるというのは、とても興味深いです」
スズハさんが口元に手を当ててこちらを観察するように言う。
うん、言われてみると、確かにそうだね。
魔物と人なんて、ファンタジー物の話だと大体が敵対関係にあるものだ。
まあ、私の場合は、元が人間だからっていうのが大きいけどね。
そんな話をしていると、いつの間にかいなくなっていたジルドが、二階へ繋がる階段から村長を連れて降りてきた。
「騒がしいかと思って来てみれば、花のお嬢さんか。無事なようで何よりじゃ。それと、そちらの方は確か……」
「行商の護衛をしてきた冒険者の者です。今回の騒動に関して、私にもできることがあれば、お手伝いさせてもらえないでしょうか?」
「……それは嬉しい提案じゃの。二階でお話させていただきたい」
「ありがとうございます」
え、お手伝い?
テアさんの捜索じゃないの?
混乱している間にもスズハさんは村長に続いて階段へ向かっていく。
どうしようかと迷っていると、ジルドが近寄ってきてコソッと耳打ちしてきた。
「お前も早く来い。どうせこんな所でできる話ではないのだろ? 場所を移すぞ」
……あ、そういうことね。
◇◇
「なるほどの。あの行商人が襲撃の主犯じゃったとは……。して、足取りは追えるのかの?」
「捜索は続けていますが、今のところ手がかりは掴めていません」
村長の部屋へと通された私とスズハさんは、村長とジルドに経緯を話していた。
もちろん、ミーシャとキャティさんは一階に置いてきている。
特にミーシャはテアさんと仲良くしていたから、教えたくはないね。
「しかし、この村を襲撃したのも、恐らくこの村の珍しい物品を狙ってのことでしょう。それさえ分かれば、誘き出すことも可能だと考えています。何か心当たりはありますか?」
「ふうむ……。見てのとおり、この村は儂ら獣人が森を拓いて作った村じゃ。ゆえに、ここには森の恵み以外、何もありはせんの」
「珍しいものなら、そこにいるだろ?」
ジルドが私の方を見てそんなことを言い放つ。
村長さんとスズハさんも私を見る。
……何、私の顔に何かついてるの?
あ、そういえば頭に花ついてたか。
「確かに……それは盲点でした。テアは魔物使い、珍しい魔物である彼女に興味を持ってもおかしくはないです」
「あまりにもこの村に馴染んでおったからの。儂も忘れておったわ」
それは褒めているのか貶しているのか、どっちなのかな?
と冗談はさておき、私自身が狙いとか、当たり前だけどあまり実感湧かない。
正直、間違っているんじゃない? と言いたい。
私が黒板を取り出そうとした時だった。
部屋の扉が勢いよく開き、男性が駆け込んできた。
「た、大変です! 魔物が……複数の魔物が、突然家の前に出現しました!」




