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四十話 VSミノタウロス その三

 今の私じゃ、ミノタウロス二体を同時に相手なんてできない。

 だから、元気な方をいったん足止めして、その隙に焦げタウロスを倒す。

 その後にサシに持ち込む、というのが理想だ。


 そのために、まずは向かってきているミノタウロスを何とか足止めする必要がある。

 三十秒ほど時間ができればそれでいい。

 焦げタウロスはまともに動き回れなさそうだし、ウォーターボールを当てるのも難しくなさそうだ。


 とはいっても、私に足止めに向いた技や魔法はない。

 蔓で抑え込むという乱暴な方法もあることにはあるけど、あの馬鹿力を抑え込める自信はない。

 やっぱり、毒花粉で霧を作って、そこに誘導するのが一番かな。


 ……なんて悠長に考えている時間もないか。

 ミノタウロスはすぐそこまで迫ってきている。

 私は後ろの蔓を使ってサイドステップで距離を保ちながら、とりあえず毒花粉を撒き散らす。

 案の定、ミノタウロスはすぐに進路を切り替えて回り込むように追ってくる。

 そこに合わせてウォーターボールを撃ち出すが、身体を捻るようにして避けようとする。

 今だっ!

 ウォーターボールと繋がったままの魔力を操作し、ミノタウロスの腹筋に横から打ち込む。

 しかし、ミノタウロスはまるで知っていたかのように、ウォーターボールを上からパンチングで叩き落とした。


 えっ!?

 何それ、なんで今の対応できたの!?

 私は動揺しながらも、なんとか移動して距離を保ち続ける。

 まあいい、切り替えよう。

 次だ次!


 さらに移動しながらちらりと視線を巡らせて辺りを確認する。

 うん、ここなら大丈夫そうだ。

 毒花粉を止めると、ミノタウロスは真っ直ぐ突っ込んできて、その剛腕を振りかざした。

 私は振り下されるパンチに合わせて、身体の前でクロスさせていた蔓の盾を移動させる。

 直後、私の身体は勢いよく後ろに飛ばされた。


 ――うぐぅ!

 コイツ、さっきのミノタウロスよりも力強いっ!

 でも、あえて攻撃を受けて吹っ飛ばされたおかげで距離は稼げた!

 私は蔓を地面に突き刺して着地しながら、ミノタウロスとの位置を確認する。

 そして、毒花粉をミノタウロスとの直線上から外れた位置に撒き散らす。

 同時に両腕を突出し、ウォーターレインの準備をする。


 ミノタウロスが真っ直ぐ突進してくる。

 さあ、左右は毒花粉、直進すれば水弾の嵐だ!

 私はウォーターレインを撃ち出した!


 数十の水の球がミノタウロスに降り注ぐ。

 前のミノタウロスと同様、コイツも腕を振り回して水球を撃ち落としているが、そんなんじゃ防ぎきれないよ!

 というか、身体が大きいからウォーターレインが想像以上に当たってくれるね。


 ……これ、このまま押し切れるんじゃない?

 そう脳裏をよぎった私は、ウォーターレインが撃ち終わる前に、ウォーターボールを準備する。


 ウォーターレインは一度撃ち出し始めてしまえば、私のイメージや魔力操作からは切り離される。

 つまり、図らずも次の魔法を準備する時間ができたのだ。

 もちろんイメージをすぐに切り替えるのは難しいけど、さんざん練習してきたウォーターボールなら問題はない。


 ウォーターレインが終わり、満身創痍の状態で姿を現すミノタウロス。

 そこに向かって私はウォーターボールを撃ち出した。

 再び身体を捻って避けようとするミノタウロス。

 させるわけないでしょ!


 ウォーターボールを操作すると、ミノタウロスの真横に漂う毒花粉の中に突っ込ませた。

 突然見えなくなった水球を探すようにキョロキョロと頭を動かすミノタウロス。

 その頭目がけてウォーターボールを撃ち込んだ!


 頭から血を流しながら地面に倒れ込んだミノタウロス。

 よしっ、勝った!

 ――そう思った時だった。


 私の景色に影が差す。

 視界の端が捉えたのは、まさしく腕を振り下す瞬間の焦げタウロス。


 あ……。

 しまった……焦げタウロスの動向見てなかった。

 スローモーションになる世界の中、なんとか蔓を動かして防御しようとするが、間に合いそうもない。


「――風神壁(ふうじんへき)!」


 と、エリューさんの声が聞こえたや否や、私の目の前で焦げタウロスの腕が止まる。

 え……助かった……?

 声のしたほうへ首を向けると、呆れ顔のエリューさんが歩いて来ているところだった。


「まったく……まだ息があるって言っておいたじゃないか。一体倒しただけで油断するんじゃないよ。鎌鼬(かまいたち)!」


 エリューさんが前へ出している左手が、見えない何かを操るように横へ動く。

 その瞬間、腕を振り下した状態で止まっていたミノタウロスが、何かで斬られたように血を噴きながら横へ倒れた。

 ……え?

 い、今、何が起こったの?


「まあ、一体は倒せたんだし、及第点といったところか。怪我はないかい?」


 まだ脳の処理が追いついていない私は、呆然となりながらもなんとか首を縦に振る。


「ならいいさ。及第点とは言ったが、元々Eランクのアルラウネが、Bランクに近い実力を持つミノタウロスに勝ったんだ。そこは誇ってもいいところだよ」


 そう言いながら、腕を組んで満足気に頷くエリューさん。

 ……えっと、一言言っていい?


 やっぱり私いらなかったじゃん!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公がそこそこ苦戦しながら強くなっていくところと、感の鋭いところが良いです! [一言] 焦げタウロスww ネーミングセンス良いですね。゜(゜ノ∀`゜)゜。
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