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二十五話 魔法の練習開始

 翌朝。

 私とミーシャは、さっそくエリューさんの店へと足を運んでいた。

 理由はもちろん、魔法を教えてもらうためだ。


「いつもこれくらいやる気を出してくれると嬉しいんだけどねえ」

「い、いつもだって頑張ってるもん!」

「はいはい。そうさね」


 反論するミーシャを適当にあしらうエリューさん。

 ミーシャはまた頬を膨らませて唸っている。

 無性に頬っぺたを突っつきたくなるのはなんでだろうね。


「さて、まずは魔法が使える原理から教えるとしようかね。ほら、ミーシャ、説明してあげな」

「ふえっ!? え、えっと……魔素を、こう、集めてね。魔力に変えると、魔法が使えるの!」


 ミーシャが懸命に身振り手振り交えて教えてくれる。

 ……なるほど、まったく分からん。

 エリューさんを横目で見ると、片手で軽く頭を押さえていた。

 よかった。

 今のがちゃんとした説明だったら、魔法を諦めてたところだ。


「すまない、今のはあたしが悪かったよ。あんた、まず、魔素は分かるかい?」


 私は首を横に振る。

 話の流れからなんとなくは想像できるけど、教えてくれるなら聞いておきたい。


「魔素ってのは、この世界のどこにでも存在する自然の力のことさ。人や魔物はもちろん、木や地面、空気中にもね。でだ、意識すればそこらに漂っている魔素を集めることもできる。昨日あんたがやったようにね」


 つまり、魔素というのは、酸素や炭素みたいなものってことかな?

 理由は知らないけど、名前も似てるし。


「ただ、集めた魔素をそのままにしておくと、また逃げちまったり、最悪、暴発する。だから、体内に集めた魔素を別の力――『魔力』に変換する必要がある」


 エリューさんが昨日慌てて止めてきたのは、それが理由か。

 私は風船をイメージする。

 確かに、風船に空気を入れても少しずつ漏れていくし、入れすぎると爆発する。

 うん、かなり危ないことをしてたんだ。


「魔素を集めて魔力に変換する。これが上手いか下手かで魔法使いの素質を見極めるのさ。ちなみにミーシャはこれが意外と上手い。こう見えて魔法使いの素質があるのさ」


 私とエリューさんが揃ってミーシャを見る。

 ミーシャは私と一緒になって話を聞いていたようだけど、突然自分の話題になって慌てていた。

 へえ、魔法の才能があるんだね。

 私はどうなんだろう?


「まあ、あんたに関しては多分問題ないだろうよ。もともと魔物は当然のようにできるからね」


 エリューさんが補足する。

 素質がないとか言われなくて安心した。

 などと思ってたら、エリューさんが爆弾を投下してきた。


「肝心の魔法の使い方だが……まあ、ぶっちゃけなんでもありだ」


 ……は?

 え、何言ってるのこの人?

 私は思わずエリューさんの顔を見つめるが、冗談を言ってるようには見えない。


「イメージすればどんな魔法でも使える。そして、イメージが強いほど魔法も強くなる。これが基本にして全てだ。ただ、イメージってのはなかなか固まらないもんだ。だから普通は魔法に名前をつけてイメージしやすくする」


 あ、そういう意味か。

 確かに、火の魔法をイメージしろと言われても、どれくらいの大きさなのか、どれくらいの火力なのか、どんな形なのか、考えることは多い。

 その点、『ファイアボール』と言われれば、小さめの球体の火で威力はそこそこ、と簡単にイメージできる。


「まあ、凄腕の魔法使いになるにつれて、名前をつけなかったり、その場でイメージを組み立てたりする奴も多くなる。その辺は慣れだね。っと、ここまで一気に説明したが、理解できてるかい?」


 私は二回ほど頷いておく。

 意外と説明が丁寧で理解しやすかった。

 横をちらっと見ると、ミーシャも同じく頷いていた。

 あれ、ミーシャは説明聞くの初めてなの?


「理解できてるならいい。あと、ミーシャ、あんたには昔同じ説明してやったただろう」

「……え? あ、も、もちろん覚えてるの! 今のは……そう、復習してただけなの!」


 慌てて取り繕うミーシャ。

 あ、やっぱり説明されてたんだ。

 そして相変わらずごまかせてない。


「はあ、まあいい。説明は以上だ。あとは実際にやってみるだけだが、その前に外へ行くよ」

「外?」

「当たり前さ。こんなところで練習して暴発なんてされたら、店が潰れちまうよ」


 なんか暴発前提で話が進んでいる気がしてちょっと複雑だ。

 いや、確かにね。

 この前は危なかったかもしれないよ?

 でもあれは魔法の仕組みを知らなかっただけでさ。

 今は大丈夫だと思うんだ、うん。


「ほら、何をぼさっとしてるんだい。さっさと着いてきな」

「お花さん、行くよ?」


 いつの間にか入り口の扉を開けて外に出ようとしている二人に声をかけられ、我に返る。

 あ、はい、すぐ行きます。


 エリューさんに連れられて、店の隣、家数件分の広さはある空き地にやってくる。


「ここなら問題ないね。まずは簡単なものから……そうさね、水でも出してみるかい」


 エリューさんはそう言うと、手のひらを上に向けて魔素を集める。

 感覚で魔素を追っていくが、エリューさんの身体に集まった時点で途切れる。

 魔力に変換された、ってことかな。

 やがて手の上の空中に小さな水の球体が現れ、徐々に膨らんでいき、そしてこぶし大の大きさになったところで止まった。


「さ、あんたもやってみな」

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