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間話 宿屋にて

「うふふ。うふふふふふっ」


 思わず笑みがこぼれる。

 だってあの子に会えたのですもの!


「ああっ! 今日はなんて素晴らしい日なのでしょう!」


 わたくしがあの子を見つけたのは、本当に偶然。

 偶然に入った森の中、偶然に立ち寄った崖。

 その中腹で、凛と咲き誇る一輪の真っ赤な美しい花。


 あの時の胸の(たか)ぶりは、今でもはっきり覚えている。

 一目見て、あれほど手に入れたいと思ったことは、生涯一度もなかったことですもの。

 けれども、あの子はまだ魔物に成りきれてはいなかった。

 その日は泣く泣くあの場を後にしましたわ。


 そして、数か月後。

 魔物に成った頃を見計らって、ミノタウロスを(けしか)けたのに、戻って来ることありませんでしたわ。


 監視に出していたバットアイの報告では、あの子がミノタウロスを返り討ちにした、と……。

 さらには、あの子が自力で移動をして、もう崖にはいないと報告し始める始末。

 思わず貴重なバットアイを一匹壊してしまいましたわ。


 ですが、代わりのバットアイを何匹飛ばしても、崖には見当たらないという報告ばかり。

 仕方がなく、わたくし自らはるばる足を運んできましたの。


 でも、ああっ!

 その甲斐あってか、こうしてあの子に出会えましたわ!

 しかもバットアイの報告通り、根っこを器用に動かして、自力で歩いて!


 なんて愛らしいのでしょう!

 なんて愛おしいのでしょう!


 そう、あの子はアルラウネのユニーク個体だったのですわ!

 わたくしの目に狂いはなかったのですわ!


「お前たち。あの子を監視しなさい」


 わたくしはバットアイを数匹呼び出すと、手短に命令する。

 バットアイたちは命令を聞くや否や、窓から飛び出していく。


「さて、わたくしも準備をしないといけませんわね」


 あの子をどうやって捕まえようかしら?

 やはり、ここは、ミノタウロスを使うべきかしら?


「うふふふふ。ああ、楽しみですわ!」

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