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百四十九話 仲間たち

大変申し訳ございません。

先日の予約投稿ができていなかったようで、本日は二話連続で投稿しております。


こちらは一話目となります。

 手にした金色のギルド証をしばらく見つめてから左右に顔を向けると、リルカは同じく金色、ミーシャは銅のプレートを手にしていた。


「……これは?」

「新しいギルド証だよ。スタンピードを引き起こす原因となった魔物は推定Sランクだからね。調査だけならまだしも、討伐までしたなら進級させるには十分だよ」


 そういうものなのかな。

 正直エステルさんの協力があってこその討伐だったからイマイチピンとこないけど、高ランクになれば色々と特典がついて私としては嬉しいし、深く気にしないことにする。


「それにしても驚いたよ。短期間でSランクの魔物が倒せるまで成長するなんてね。いつか僕にもコツを教えてほしいな」

「お主は魔法に向いていないから無理だの」

「あらら、じゃあ仕方がないかな」


 エステルさんが切って捨てるが、あまり残念そうには見えない風に肩を竦めるギルマス。

 まあ、ギルマスは例の巨大な剣や色々な魔道具を使う接近戦タイプだからね。

 魔法の戦い方のコツとか教えられてもどうしようもないよね。


 それからギルマスが呼んだお姉さん――ずっと扉の前で待っていたのかな――の案内で再び受け付けへと戻り、プレートに名前などを刻んでもらう。

 そして今のギルド証と交換で新しいものを受け取り首にかけた。


「お花さん、似合ってる?」


 ミーシャが首から下げた銅のプレートを私に見せてくる。

 うん、似合ってるよ。

 嬉しそうに尋ねてくるミーシャの頭を撫でると、にへらと表情を崩した。


「……相変わらず仲が良い」

「まったくだの」


 呆れたように呟くリルカと、その隣でくつくつと笑うエステルさん。

 まあ、ミーシャはかわいい妹みたいなものだからね。

 二人の視線を受けながらも、私はミーシャが満足するまで頭を撫で続けるのだった。


 ◇◇


「……ただいま」

「ただいまなの」


 ギルドを出た私たちは道中の店で夕飯を取った後、ひさしぶりの我が家へと帰ってきた。

 リルカとミーシャに続いて私も玄関の扉を潜り、その後ろをエステルさんが珍しくおずおずといった様子でついて来る。


「邪魔するぞ」


 ただ、何が可笑しかったのか、ミーシャがその様子を見てくすくすと笑い声をあげる。


「違うよ、エステルお姉さん。家に帰ってきたら「ただいま」なの」


 ああ、そういうことか。

 私は振り返ったリルカと顔を見合わせると、エステルさんの方を向いて頷いた。


「……前にも言ったけど空き部屋はある。自由に使ってくれて構わない」

「そうは言われてもな。妾が昔住んでいた屋敷と同じ程度には広いぞ、この家」


 確かエステルさんはどこかの貴族の娘だったっけ?

 この家も貴族由来の家だったはずだから、同じくらいの広さに驚いているんだろうね。

 私も初めて見たときは驚いたし。

 エステルさんの言葉にリルカはしばらく考え込むように帽子の鍔に手をかけていたが、「分かった」と顔を上げた。


「なら交換条件。ここに住む代わりに昔の魔法や魔道具についてもっと教えて」

「それは妾に得が有り過ぎる条件ではないか……? いや、お主らはそういうやつだったの」


 エステルさんは一人で納得したように苦笑いしながら頷いた後、少し照れたように「ただいま」と口にするのだった。


 その後、家の中を軽く一周し、最後にリビングを案内しているところでミーシャがふわあとあくびをしたため、今日は解散となった。

 そこでリルカが何かを思い出したような声をあげる。


「……エステルの寝る場所がない」


 あー、確かに。

 この家は二階が寝室になっているけど、そのうちの二部屋はリルカの寝室と書斎、一部屋は私とミーシャの相部屋となっている。

 そして残りの二部屋には荷物――大半ががらくた――が乱雑に詰め込まれている。


「妾はこのソファで十分だぞ?」

「それはダメ。家で寝るときはベッドで」


 エステルさんが近くにあったソファの背もたれをポンポンと叩くが、リルカがすぐに否定する。

 リルカはしばらく考え込むが、すぐにエステルさんへ顔を向ける。


「……今日のところはボクの部屋に来て。一人用のベッドだけど二人で寝られないこともない」

「別にここでも――わ、分かった分かった」


 有無を言わさないリルカの無言の圧力に、エステルさんは早々に折れる。

 あー、リルカって意外と強情なところがあるんだよね。


「うみゅう……」


 そこでついに限界が来たのか、ミーシャが私に寄りかかって船をこぎ始めてしまう。

 あ、こら、立ったまま寝たら危ないよ。

 私は蔓を伸ばしてミーシャの身体を支えると、首と足に腕を回して抱えあげる。

 女の子なら一度は憧れる、いわゆる『お姫さま抱っこ』というやつだ。

 ……まさか私がする側になるとは思わなかったけど。


「……じゃあおやすみ。ボクの部屋はこっち」

「分かっているから引っ張るな」


 エステルさんの腕に身体を絡ませるようにして引っ張っていくリルカ。

 修行中や馬車旅の途中でも思ったけど、あの二人って意外と仲良いよね。

 お互いに魔法好きという共通点もあるし、これからも仲良くやっていけそうで良かった。


 私は二人を見送った後、ミーシャを抱えて自室へと向かうのだった。

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