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百二十五話 女子会……?

 遺跡を脱出した私たちは、日が暮れると同時に懐かしのマテオンへと帰還した。


 ギルマスへの報告などは明日に回し、とりあえず宿屋へ直行。

 トニスさんとアッリさんは調査隊用の宿舎があると聞いていたが、何故か一緒に宿屋へ泊まることになった。

 クロエさんいわく、


「だって明日合流する手間が省けるでしょう? それに今戻られるとギルマスに伝わるかもしれないし。今日くらいお風呂に入ってふかふかのベッドでゆっくり休ませてほしいわ」


 とのこと。

 二人もお風呂やベッドの魅惑には逆らえなかったのか、ごくりと生唾を飲み込み顔を見合わせるとすぐに頷いた。


 心配して待っているギルマスには申し訳ないけど、私も報告は明日にさせてもらおう。

 まあ、行くと言ったところでクロエさんに止められるだろうけど。


 部屋はミーシャたち家族で一部屋、私、リルカ、アッリさんの三人で一部屋、そしてトニスさんが一部屋で割り振った。

 遺跡では再会を祝うこともできなかったため、ミーシャには思う存分両親に甘えてほしい。


 ミーシャたちと別れて部屋へ行くと、順にお風呂へ入る。

 アッリさんは最後でいいと遠慮していたが、アッリさんが一番長く遺跡に籠っていたんだし疲れも溜まっているだろう。

 半ば無理矢理にアッリさんを風呂場へと押し込んだ。

 次にリルカ、最後に私が入る頃には、アッリさんはベッドに倒れ込むような体勢で寝息を立てていた。


 まあ、無理もないね。

 正確には分からないけど、多分十五日ほど遺跡の中で過ごしていたことになる。

 魔石以外に明かりもなく、いつ魔物に襲われるか分からない状況。

 考えただけでもぞっとする。

 しかも怪我が重なったとなれば、死を覚悟しても不思議じゃない。


 そんなことを考えながら久々のお風呂を堪能して部屋へ戻ると、いつの間に起きていたアッリさんとリルカが並んだベッドに向かい合って腰掛けていた。


「……アルネ。ちょうどいいところに」


 何故かリルカが珍しく困り顔を浮かべながら、私の方を振り向く。

 向かいのアッリさんも合わせてキラキラした目を向けてきた。


「あのっ! アルネさんって、魔物なんですよね!?」


 えっと……何?

 いきなりの質問に、私は思わず首を傾げてしまう。

 それを否定と受け取ったのか、アッリさんはベッドから身を乗り出す。


「あ、不躾にすみません! 魔物だということを隠しているのは知っています。ですが、ぜひとも魔物のアルネさんからの意見も聞きたくて……!」


 そうまくし立てたアッリさんは、膝の上に乗っていた紙――遺跡の地図を私に見えるように広げた。


 うん、とりあえず落ち着こうか。

 隠しているのは確かだけど、別にアッリさんにはもうバレているし、秘密にするつもりはない。

 アッリさんの肩を掴んでもとの位置に座らせると、私もリルカの隣へ座る。

 そしてリルカに説明してと目線を送ってみる。


「……アッリさんはアルネが風呂へ行って少ししてから目を覚ました。それからすぐにカバンから地図を取り出してメモを取り始めて……」

「さっきはついウトウトしてしましたが……。せっかく遺跡で貴重な体験をしたのですから、記憶が新しいうちに書いておかないと!」

「……しばらく様子を見ていたらボクも遺跡について聞かれて。アルネが出てきたのがちょうどそのタイミング」


 ……なるほどね、今の謎の状況はだいたい分かった。

 私はリルカにありがとうと頭を下げてから、アッリさんの方へ向き直る。

 私の心配返して……じゃない、何が聞きたいのかな?


「えっとですね、お聞きしたいのは二点。遺跡の形状と魔素についてです」


 形状と魔素?

 形状は確かに気になっていたけど……。

 でも、幾何学模様とか魔法陣とかは前世の知識だし、魔物の意見にはならないよね?


「この形状について何か心当たりとか感じることってありますか?」


 アッリさんが再び地図を広げて私の顔の前まで近づけてくる。

 ちょっ、そんなに寄せなくても見えるから。


 私は手でやんわりと地図を押し返しながらベッドから立ち上がると、後ろにあった机から紙とペンを持ってくる。

 アッリさんが不思議そうに見てくるので、そういえば文字が書けることは伝えていなかったなと内心苦笑する。


『分からない』


 そう書いて見せると、アッリさんは目を見開いた。


「え、ええーっ! アルネさん、文字書けるんですか! 魔物なのに!?」

「アルネは魔物だけど特別な魔物。文字はミーシャから教えてもらったらしい」

「はえー、凄いです。……あ、で、形状には心あたりないんですね」


 うーん、なんか嘘ついているようで心苦しい。

 試しに『幾何学模様』と書いて見せてみる。


「……キカガクモヨウ? 何ですかそれ?」


 残念、やっぱり通じないか。

 私は綺麗な模様のこと、と伝えておく。


「次の質問ですが、遺跡中の魔素について何か違和感はありませんでした?」


 実は魔素については覚えがある。

 というのも、遺跡から出てきて分かったことだけど、遺跡内の魔素の量が通常よりも多いのだ。


『魔素 普通より多い』


 リルカも心当たりがあったらしく、「言われてみれば……」と頷いていた。

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