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間話 薄幸の天才少女

 少女は生まれつき奇病を患っていた。

 体内から自然に魔力が放出されず、溜まり続けるという病。

 もちろん意識して魔法を使うことで、溜まった魔力を消化することはできた。

 そのため、少女は物心ついてしばらく経った頃にはすでに天才と呼ばれるまでに魔法を使いこなしていた。


 しかし十二歳を超えたあたりからだろうか。

 日常的に魔法を使っていた影響か、魔力の溜まる量が少しずつ増えていった。


 普通の人なら使える魔力が増えて喜ぶところだっただろう。

 しかし少女は溜まった魔力を自然に放出できない病。

 少女が魔法を使う頻度は日に日に増えていき、威力も大きくなっていった。

 やがて魔法でも消化しきれなくなった魔力が、徐々に少女の身体を蝕み始めた。


 十六歳の誕生日を迎えようとしていた数日前の深夜。

 始めての魔力暴発が起きた。

 少女の目が覚めたときには、まるで小さな嵐が過ぎ去っていったように、部屋の中の物が散乱していた。

 そのとき少女は、恐れていたことがついに起きたかと静かな目で部屋を見渡していた。


 その日以来、少女は部屋に籠り研究を始めた。

 幸い少女は裕福な貴族の家庭の一人娘であったため、資金に困ることはなかった。


 奇病の原因解明。

 魔力を放出する手段

 魔力暴発を押さえる方法。


 ありとあらゆる書籍を読み漁り、理論を組み立て、(おのれ)の身体で実験を繰り返す。


 しかしそんな努力もむなしく、いつしか少女の身体は暴発が起きるたびに耐えきれず血を流すまでに悪化していた。

 そして、少女は一つの結論に辿り着いた。

 人の身では膨大な魔力に耐えきれない――と。


 それから数年後。

 二十歳を迎えると同時に、少女は独自の理論を元に自身の身体を魔物のそれへと変質させた。


 少女の名はエステリーゼ・ヴァン・ヴェルーチェ。

 この時点では世界で唯一の、元人間の魔物――。

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