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百七話 VSストーンゴーレム

 突然の地響きに、私は慌てて辺りを見渡す。


 ――え、何?

 もしかして地震?

 隣ではミーシャも同じように慌てているが、リルカだけは警戒するような目を周囲に巡らせている。


 地響きはすぐに収まるが、五秒ほど経つと再度揺れが起きる。

 それが幾度か繰り返された頃、私はようやく揺れの正体に気付いた。

 これ、足音か……!


「お花さん、リルカさん! あっち見て!」


 声を張り上げたミーシャが指差す方を見ると、大きな岩の陰に動くものが視界に映り――私は唖然とした。

 いやいや……あれは嘘でしょ?


「……ストーンゴーレム」


 リルカのぼそりとした呟きが聞こえる。

 岩の陰から現れたのは、周囲より少し濃い色の岩でできた巨大なゴーレムだった。

 足一本だけで私の身長と同じくらいはあるだろうそのゴーレムは、目も口もない小さな頭らしきものを私たちの方へ向ける。

 そしてまるで意思のない機械のように躊躇なく腕を振り上げた。


 ――やばいっ!

 私は咄嗟に蔓を六本全て伸ばすと、花の蔓二本をミーシャとリルカの腰にそれぞれ巻き付け、後ろの棘の蔓で地面を強く蹴った。


「ひゃっ!?」

「アルネ……!?」


 声をあげる二人を引き寄せながらその場から離れた、次の瞬間。

 さっきまで私たちのいた場所へと大きな岩の腕が降り下ろされた。


 お腹の底まで響くような轟音とともに、風圧と砕けた岩の破片が飛来する。

 前の蔓二本で大きめの破片から順に弾いていくが、数が多すぎて間に合わない!


「……燐火!」


 そう思った瞬間、後ろから炎の盾がいくつも現れ私たちと破片の間に滑り込み、岩の礫を全て防いでくれる。

 蔓の先に顔を向けると、炎の玉を周囲に浮かべたリルカが両腕を伸ばして燐火を操っていた。

 リルカ、ナイスアシスト!


「お花さん、後ろ後ろ!」


 ミーシャの慌てた声に後ろに目を向けると、数メートル先が崖になっていた。

 え、うわっ――!

 後ろの蔓を地面に突き刺して急ブレーキをかけ、なんとかぎりぎり着地する。

 ありがとうミーシャ、助かったよ!


 私は蔓をほどいて二人を下ろし、三人してゴーレムの方へ目を向ける。

 今の一撃で道の一部は崩れてしまったが、同時にゴーレムの腕も壊れてしまっており、バランスを崩してうまく動けなくなっているようだ。

 そりゃあいくら岩でできているからといっても、あれだけ強く叩きつけたら壊れるよね。


 それにしても、ミーシャが大きいって言ってたけど、まさかあんな五メートル以上もある化け物だとは思わなかったよ。

 私が内心そんな感想を抱いていると、リルカが口を開いた。


「あれはストーンゴーレム……? 特徴は同じだけど……」


 ……え、違うの?

 私とミーシャが揃って首を傾げる。


「ゴーレムじゃないの?」

「恐らくゴーレムだと思う……。けどいくらなんでも大きすぎる。ボクの知っている普通のゴーレムはあれの半分程度」


 なるほど、つまりあのゴーレムが特別巨大ってことか。

 理由は分からないけど、これも遺跡やSランクの魔物の出現に関係があるのかもしれないね。

 まあ、あんな腕が壊れて動けない状態じゃ、ただの良い(まと)だけど。

 私がウォーターカッターを放とうと腕を伸ばして魔素を集め出すのと同時に、驚くことが起った。


「腕が……治っていくの……」

「……ゴーレムは腕や足の一本くらいなら修復できる」


 いや、それ早く言ってよ!

 のんびり見ていた私も悪いけどさ!

 周囲に散らばった岩が、ゴーレムのなくなった腕の先に吸い寄せられるように集まっていく。

 で、どうやって倒すの?

 私は首を傾げると、リルカは説明を続ける。


「倒す方法は二つ。致命傷になるくらいの大ダメージを与えること。または身体の中心にあるコアを壊すこと」

「コア? スライムみたいなの?」

「そう」


 ならこのまま撃てばいいってことだね!

 私は大きめのウォーターカッターを作り上げると、まだ腕を再生中のゴーレムへ向かって放った!

 巨大な水の刃はゴーレムの身体の中心を通るように、斜めに切断した。


 致命傷を与えたのか、それともコアを破壊できたのか。

 ゴーレムの上半身が滑るように落下し、続けて残った足なども崩れ落ちていった。

 土煙が収まった後、そこにはただの岩の山ができあがっていた。


 まあ、所詮ただの岩の集まりってことだね。

 ワイバーンよりとは言わないけど、ドラゴンの鋼鉄のような鱗に比べたら柔らかいものだ。


「お花さん、凄いの!」

「さすがアルネ」


 私はキャッキャとはしゃぎながら抱きついたミーシャの頭を撫でつつ、ゴーレムの残骸に目を向ける。

 さっきリルカは『()()』と言ってたし、魔石とは違うのかな。

 もし魔石だとしても、あの岩山の中から探すのはちょっと無理があるけどね……。


「……アルネ? どうかした?」


 リルカが首を傾げて覗き込んできたので、私はミーシャを剥がすと黒板を取り出して聞いてみる。

 するとリルカはなるほどと興味深げに頷いた後、しかし首を横に振った。


「……ゴーレムのコアはただのコア。残念だけど魔石とは違うもの」


 あ、やっぱり……。

 じゃあゴーレム狩りはやめておくかな。

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