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踊る軍神  作者: 美作為朝
2/10

宗教的原理主義派が支配するアフリカの小さな街のはるか後方の掩体壕内、第一フェーズ

 そこは、窓がないはずなのにエアコンが効いて、フェルマー中尉達がいる灼熱の路地裏よりはるかに快適だった。

 前方の三面には信じられない数のモニターが分割され配置され映し出され、戦場のありとあらゆる情報が、可視化、数値化され映し出されていた。

 戦場でのありとあらゆる蛮行と愚行と残虐性はすべて、ドットの光子か数字に変換されていた。

 これほど、残酷で、人の心理を無視した完全にして完璧な、倒置法は文明社会には、なかった。

 ここは、三重四重にベトンで防護された地下壕の中の一室。

 位置としては、フェルマー中尉たちが、四苦八苦している位置からおよそ、500ydsほど後方。

 重いコンクリート性のドアを二人の衛兵が守り。超汎用性のアンテナのみが幾重に迷彩ネットをかけられ地上に出ている。

 過激派は、略奪したり鹵獲した戦車は持っていても、航空兵力は一切持っていない。これほど滑稽な防御と備えもまたなかった。

 これは、一つの試みだったのだ。

「もういいんじゃないですか?」

 どこから見ても完璧なギーク(オタク)の少尉が言った。戦闘服は一番小さいサイズを着用しているのにぶかぶかだ。

 この少尉が兵隊の第一週の基礎訓練をクリアしたとは到底思えない。

 少尉の名前は、アラン・チューリング。

 フェルマー中尉の上官にあたる中隊長のリー大尉は怒りのあまり自分の唇を噛み切りそうな表情だ。

「貴様の戦友がどんどん死んでおるのだぞ、少尉」

「今日駐屯地で朝飯を一緒に食っただけであります、しかもあのフェルマー中尉とだけ」「貴様ーっ」

 大尉にしては歳を取った兵卒上がりのリー大尉は、チューリング少尉ににじりより睨めつけたが、チューリング少尉があまりにも小さすぎて、相当視線を落とさなければ、睨みつけることは不可能だった。

「自分の第61特殊実験小隊は、いつでも準備ができております。当該地域における指揮権の移譲を」

 二人の前方の画面では今一人の勇敢な兵士が、広場を目指し、狙撃され、また一人倒れた瞬間が映し出されていた。

「スリーメン・ダウン」モニターを監視する本部管理中隊、担当の伍長が小さく声を上げた。

「大尉が頑張らられれば頑張るほど、被害が大きくなります」

「貴様ーっ」

 リー大尉が、ハイスクール時代よろしく、小さくてダサくて醜いギークの胸ぐらを掴んだ。

「やめんか、大尉」

 争う二人より一段、後方に居た、ターレス少佐が止めた。

「チューリング少尉、好きにやりたまえ」

「はっ、これより、第61特殊実験小隊、作戦行動にうつります」

 このギークは、敬礼まで下手だった。

 ターレス少佐は、敬礼を返そうともしなかった。

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