第3話 過去へ
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ノボルは翌朝起きなかった。
母親が学校に遅刻すると急かしにきても布団から出ようとはしなかった
母親は仕方なく欠席届けを出しに電話を手にした
「あれ〜? ノボルさん、学校というところ行かないんですか? 学問を勉強するんでしょ?」
沖田が話かけてもノボルは返事をしない。
「ノボルさん。新選組をご存知ですか?私たちは 時代と戦いました。今までこの日本は、さまざまな考えを持った日本人同士が命をかけて戦い、時代が築かれてきました。その時代を根底からひっくり返そうとする悪霊を私は放ってはおけません。私たちでその正体をつきとめましょう。ノボルさん、いきますよ。起きてください。」
沖田は必死にノボルに声をかける。
外は夜があけ、小鳥たちが嬉しそうにさえずりあっている。
ノボルがようやく上半身を起こした。
「…(どうやってその悪霊を探しにいくんだ? 探しだしてどうする? 生身の人間の俺に何ができる?相手は霊だろ?)」
「 私が力を貸します。あなたは私と一体になって戦えばいい。相手は目的の悪霊だけとは限らない。でも心配いりませんよ。私がついてますから。」
沖田は笑みを浮かべている。
話を聞いていると事態は深刻なのにこの青年はいつも楽しそうだ。
「…(どこにいく?どうやって旅立つんだ?)」
「この大きな張り紙が入り口です… ところでこの人、誰です?」
「…(浜崎あゆみ。歌手だ。)」
「ふうん。歌手…ってなんですか?」
「…(歌を歌う人間のことだ)」
「へえ〜。是非一度聞いてみたいな。」
ノボルは寝間着を脱ぎ捨て、学生服に着替えた。
そして沖田をじっとみつめた。
「あんた。心の中の声が聞こえるのか?」
「ええ。私はあなたと同化する身ですからね」
沖田はニコッと笑いながら浜崎あゆみのポスターに手を触れた。
するとポスターの中に空間のゆがみができた。
同時に眩い光が放たれた。
「いきますよ。ここが入り口です。」
ノボルは黙ってポスターを見つめていた。
「沖田さん。」
「なんです?」
「浜崎あゆみに惚れただろ?」
ノボルは迷いなくその空間に飛び込んだ。
「まいったな〜。あなたにはかなわないや」
沖田も空間の中に飛び込んだ。
主人のいなくなったその部屋では、浜崎あゆみが1人大きな張り紙の中で笑っていた
第三部もご愛読いただきありがとうございます。次作も是非よろしくお願いします。