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オルタの歌  作者: 春豆
第一章 オルタの子
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第三話 海の嵐と陸の嵐

 黒い雲が遠くに見え始めた海原を、蒸気船がのんびりと進んでいる。

 いや、船長は全速力を指示しているのだが、未だにレシプロ式蒸気機関を使っている古い貨物船では、この程度が限界だった。

 低気圧が来て海が荒れると小さな蒸気船にとって命取りになる。準備のため慌ただしく走り回る船員を眺めながら、ユノンは鼻唄まじりで外を眺めていた。


「ユノンさん、ご機嫌だね」

「うん。海を見てると落ち着くんだよね、不思議と」

「ふうん。でも低気圧が近づいてるみたいだし、そろそろ中に入った方がいいんじゃない」

「んー、もうちょっと見てからね」

「落ちても知らないよ」


 両親を海で亡くしたのに怖くないのだろうかと首を傾げつつ、イオリは船底の客室へ向かった。モナはいつもの通りおとなしく寝そべり、イオリの帰りを待っていた。


 工業都市ピサノとイオリの実家である小さな島カンピージを結ぶ定期船の船体には、白い文字で『パトリシア』と描かれている。完全に名前負けしているボロ船には、等級別の客室などという洒落たものは無く、皆大部屋へ押し込められている。

 イオリは、適当な場所を見つけて床に座ると、小さなノートを取り出した。果樹園の経営に必要な情報がびっしりと書き込まれたそれを眺めながら、頭は母親と兄夫婦への説得方法を考えていた。

 行く当ての無かったユノンに、住み込みで働く事を提案した事は後悔していないが、少し後先考えていなかったかと反省はしている。

 勢いで誘ったら了解されたなどと正直に答えたら、母の鉄拳制裁が待っているだろうし、従業員を連れてきたと言えば、そんな余裕は無いと兄の説教地獄が始まるだろう。


 ここは一つ「不幸な境遇で生活に喘ぐ少女」を全面に出して、感情に訴えていく作戦でいこう、そう決心した時に船が大きく揺れた。そこかしこから乗客の悲鳴があがる。どうやら低気圧を避けることは出来なかったようだ。絶望的に足が遅い『パトリシア』では、自力で低気圧を抜けるのは難しい。大人しくして通り過ぎるのを待つしかないのだが、船体が先ほどからギシギシと嫌な音を立てており、それが乗客に不安を与えていた。


「この船、大丈夫なのかしら」

「おかあさん、怖い」

「島までまだ遠いぞ。難破したら助かるかどうか」

「俺泳げねぇよ、かあちゃん」


 状況が見えない船底では、悪い想像ばかりが膨らんでいくが、だからといって何が出来るわけでもない。外に出たくとも、雨風に飛ばされるのが怖くて出来ない。皆ひたすら恐怖に耐えるしかないのだ。ピリピリした雰囲気の中、そっと開いた扉からユノンが入ってくるのが見えたので、手招きして隣に座らせた。


「遅かったね、ちょっと心配した」

「ごめんね、雨が降り出してからすぐ戻ったんだけど、船内で迷っちゃった」

「ああ、立体迷路だからなあ、この船」


 ユノンから外の様子を聞いたが、あまり状況は良く無さそうだとわかる。

 嵐の規模がかなり大きいのだ。

 船長もまだ動けるうちに、急いで島にたどり着きたいと考えているのだろう、エンジンがフル回転で稼働する音が響いている。


 そんな状態が一時間ほど続いたある時、突然ガスンという音とともに裸電球の明かりが消えた。

 女性の悲鳴と男達の怒号が飛び交い、客室は混乱の渦に巻き込まれた。何かが割れる音や人の倒れる音が暗闇によって恐怖を倍増され、一部が恐慌状態にある。イオリは、パニックの影響を受けないようユノンの手を引いて貨物の後ろに身を隠した。モナは臭いを追って、ちゃんと付いてきている。


「ちょっとここで様子見ていよう」

「イオリ君落ち着いてるね、モナも」

「空を飛んでれば、こういう事は多いからね」

「なるほど」


 ヒソヒソ話していると、再び電球に明かりが灯った。しかし、先ほどまでと違いとても弱々しい光が、明滅しているため、乗客の不安をさらに煽っていた。

 そこへ、船長からの案内放送が聞こえて来た。


「乗客の皆様、船長です。当船は現在低気圧の直撃を受けております。少々揺れますが、問題はありません。慌てず客室から出ないようにお願いします」

 

 低い落ち着いた声で『パトリシア』が低気圧のど真ん中に入ってしまったこと、抜けるまで2~3時間かかることなどが伝えられた。

 エンジンが止まった事については何も言及していなかったが、取りあえず明かりが付いたことで暗闇の恐怖からは逃れることが出来た。今頃船尾では、機関士がエンジンを再起動させようと躍起になっているだろう。

 航空機と違い、船のエンジンが止まったからと言って直ぐに生命の危険があるわけではない。ただ、このまま波が高くなり、横波を受けるようになると転覆の可能性は高くなる。できる限り早く操舵が回復しないと危ないことには変わり無い。


「ねえイオリ君、この船沈まない?」

「船は専門外だからわからないなぁ」

「うう、窓も無いしちょっと怖いかも」

「なら、気晴らしに冒険話でもしようか」

「冒険?」

「そう。ちょっと待って」


 イオリはリュックからオルタを取り出す。『カーク10』から取り外し、大切に緩衝材でくるまれたオルタは、解放されるとすぐに青緑色の薄明かりを放ち始めた。

 その光は、見ていると心が落ち着いてくる不思議な効果があるので、イオリは落ち込んだ時や哀しい時に良くオルタを抱えて寝ることにしている。

 床に置かれたオルタは船室の壁をゆらり、ゆらりと照らし始めた。


「イオリ君のオルタは、綺麗だね」


 ユノンはぺたりと床に座りながらオルタの光を見つめている。

 揺らめく光と一緒に、かすかに頭が揺れ唇が動く様子がまるでオルタと会話をしているかのようだった。一瞬見とれてしまった自分を誤魔化すように、咳払いを一つしてからイオリは話し始める。

 それは、イオリの父ディエゴ・カルデローニと共に『カーク10』を駆って各地を廻った時の冒険譚だった。


 一つ目のミッションは『消えた極楽鳥を探せ』だ。

 南の島に住むという七色の鳥が貴族の元から逃げ出した、至急回収せよ。そんな依頼を受けてから父とともに七日と半日、ピサノ中を探しまくった挙げ句にようやく掴まえたのはただのオウムを七色に塗りたくったまがいもの。よくよく調べてみれば有名な詐欺師の手によるものだとわかり、怒り狂ったディエゴは執念で詐欺師を探しだし、ついには隠れ家に『カーク10』で突っ込んだ。


「あはははは」

「馬鹿だろ、父さんは頭に血が上ると暴走するんだ」

「でも格好良いと思う」

「同乗者はたまったものじゃないって」


 二つ目のミッションは『禁断の白い粉』である。

 貴重な白い粉が入った木箱を大至急とある豪商の元にとどけることになった。ところが離陸直前になって空港警察の臨検を受けてしまう。禁止薬物ではないかと疑われ、検査をするもいずれの薬物にも反応しない。しかしそれが良くなかった。未知の薬物ではないかと大騒ぎになってしまう。このままでは依頼人へ届けることが出来なくなると焦ったディエゴは、検査官の一人を蹴り飛ばして強引に離陸してしまった。空軍に追われ、警察から指名手配されながらも、ギリギリ約束の時間に間に合ったディエゴとイオリが豪商に連れてこられた先には、病床に横たわる一人の少女がいた。『白い粉』は世界的に有名な研究者が開発した新薬だったのだ。


「それで、その子はどうなったの」

「うん、薬が効いたみたいで順調に回復したって。その薬のおかげで何百人も救われたって」

「凄いよ、イオリ君」

「凄いのは薬を発明した人の方だけどね」


 三つ目のミッションは『母の愛』だった。

 ある時、老婦人を西の国境付近まで送り届ける依頼を受けた。隣国とは紛争したことがあり、その時国境線で分断されたという大きな邸宅がある事はイオリも知っていたが、依頼人の家だとは思わなかった。その老婦人は40年振りに返還された邸宅へ戻り、母親と妹を護った息子の遺品を必死に探した。そうしてついに見つけたのだ。母親に宛てた息子からの手紙を。

 けれども、婦人はその手紙を開けること無く家に持ち帰ったという。


「どうして開けなかったの。折角見つけたのに」

「俺もそう思ったんだ。だから聞いてみた」

「そのご婦人は、何て?」

「読まなくても、わかるからいいんだってさ。開けたら息子の魂が逃げていくような気がするんだって」

「うーん、私には理解できない」

「俺も未だにわからない」

「あら私には良くわかるわねぇ。母親ってそんなものよ」

「うわっ、誰!?」


 小さな子供を腕に抱いた女性が、イオリに微笑みかける。驚いて周りを見回してみれば、いつの間にか人だかりが出来ていた。小さな子供から大人まで、みな一様に目を輝かせながら夢中になってイオリの冒険譚を聞いていたのだ。恐怖を紛らわせるには、丁度よかったのだろう、モナを抱いている子供もいる。


「さあ、早く次の話を聞かせて」


 女性に促され、イオリは冒険の続きを語り始める。8つ目のミッションを話し終わるころにはすっかり低気圧を抜け、カンピージ島が見える所まで来ていた。

 そして艦内放送で安全宣言がなされると、乗客達は久し振りに新鮮な空気を吸おうと我先に甲板へと上がっていった。

 イオリ達も後に続いて甲板へ出ると、そこには今までの暴風雨が嘘だったかのように綺麗な茜空が広がっていた。


「なんか気持ちいいよねぇ」

「嵐の後は空気が美味しいんだよな」


 思い切り空気を吸い込み、背伸びをするイオリの背中をユノンがちょいと突く。

 指さした方向には、夕日を受けて朱く染まるカンピージ島があった。

 つい昨日出てきたばかりの島が、なんだか随分懐かしく感じるイオリであった。





 イオリの実家は、カンピージの南側にある。漆喰の白い壁にオレンジ色の煉瓦屋根という伝統的な作りだが、エントランスに下げられた丸い紙の照明は見たことがなかった。ユノンが上からのぞき込むと、中で炎が揺らめいているのを見つけ、驚きの声を上げる。


「イオリ君、何これ綺麗。見たことないよ」

「母さんの祖国で使われる照明らしいよ、風流でいいだろ。風が無い日は時々こうやって飾るんだ」

「うん、ゆらゆら光が踊って素敵だね」


 柔らかな光が、ゆらゆらと白い壁面を照らし、豊かな表情を作っている。飽きることなく眺めてるユノンの横顔を、イオリもまた黙って見つめていた。出来ることならこのままずっと見ていたかったが、そうもいかない。兄夫婦が果樹園から帰ってくる前にユノンを母親に紹介しておく必要があった。なにしろ、現在カルデローニ家における最高権力者は母親なのだから。


 イオリは片手で扉を開け、もう片方は手のひらを上に向けて胸の前に持ってきた。この地方で大切なお客さまを家に招くときの礼儀だった。モナも扉の横に座り、もてなしのポーズを取っている。


「そういうわけで、ようこそカルデローニ家へ」

「えっと、おじゃまします、かな?」


 客人として招かれて良いものかどうか悩んでいるユノンの手をとり、玄関ホールへと入ると、丁度イオリの母親がホールへと降りてくるところだった。最近は恰幅が良くなり、白髪も入り始めたが陽気な所は相変わらずだ。

 白いエプロンを外しながら片手に持っていたバケットを振り回したので、ボロボロとオリーブがこぼれ落ちている。


「おや、イオリ無事だったのかい」

「母さん、ただいま」

「ただいまじゃないよ、配達に行ったきり帰らないわ、連絡は寄こさないわでトマーゾさんカンカンだよ、一・二発は覚悟しときな」

「うえ」

「それでそっちの可愛い女性は?まさかついに初彼女?お前男色家じゃなかったのかい。紹介しなさい、さあ今すぐ」

「いやユノンさんは彼女じゃな」

「ユノン!なんて可憐で素敵な響きだろうね。ユノンちゃん、イオリの何処が気に入ったんだい。爆発したクセッ毛?それとも朴念仁なところか、飛行機馬鹿なところか、あるいは」

「あ、あの…」


 迫り来る母、ハルナ・カルデローニの圧力に怯み、壁際まで押し込まれてしまうユノン。慌てて助けに入ろうとしたイオリだったが、突如背後からヌッと伸びてきた太い腕に絡め取られてしまう。

 軽々と持ち上げられてバタバタと脚を振るが、ビクともしない。


「おうイオリ、無事だったのか。遊び歩くなら連絡の一つくらい入れたらどうだ」

「兄さん!」

「事故にあったんじゃないかって、ミケなんて心配して寝不足なんだぞ」

「義姉さんが?あ、いや今はそんな事どうでもいい」

「イオリ君!『そんな事』なんてひどいじゃないの」


 兄の背後から顔をだした義姉のミケーラが顔を赤くして怒っているが、構っている暇は無い。

 イオリは腕を引きはがそうと全力を込めた。


「それどころじゃないんだよ!いいから、放せっ、てば、兄さん」

「相変わらず非力な奴だな。まともな食事とってるのか」

「毎日同じ食事だろうが!」

「駄目よイオリ君、そんな汚い言葉遣い。ああ、イオリ君が不良になっていく…」

「バウ!」

「ほら、モナも心配してるわ」

「してない、尻尾振ってるだろ、喜んでるだけだっての」


 とにかく降りようと暴れるイオリを気にも留めず、兄のトマーゾは帰宅の挨拶をしようと母親を探す。その段階に至って、ようやく見知らぬ人間が居ることに気がついた。


「あれ、おふくろと話してるあの子、誰だっけ。ミケの友達?」

「ううん、知らない」

「なあイオリ、お前知ってる?」

「だ、か、ら、さっきからそれを説明しようとしてたんだよ、腕放せ、降ろせ」

「おお、悪いな」


 いきなり手放されたせいで、床に尻餅を付いて倒れてしまったイオリの頬に、ふんふんとモナが鼻をすりよせてきた。まともなのはお前だけだと抱きしめるイオリのもとに、母親とユノンがやってきた。


「何してんだい、イオリ。遊んでないで、さっさと夕食の支度を手伝っておいで」

「いや、それよりユノンさんの」

「ああ大体事情は聞いたよ。まかせておきな、うちで面倒みるから」

「え」

「今更一人増えたところで、どうってことないね。ちゃんと働いてもらうしさ。そんなことより、イオリ!」

「はい!」

「男なら、きちんと責任取るのよ」

「は?」

「子供だからって、逃げたら許さないからね」

「いや、何のことかわからな―」

「返事は!」

「はいっ」


 満足そうにうなずく母の後ろで、小さくゴメンのサインを出しているユノンを見つけた。母親の圧力にまけて何かとんでもない事を口走ったのだと直感的に理解する。すぐに問いただそうとするが、本日の料理当番トマーゾに首根っこを掴まれて厨房へと引き摺られていった。

 カルデローニ家では男子も厨房に入る。母親のハルナが作る料理は異国の料理だからだ。それはとても美味いものだったが、父親は地元の料理も愛していた。だから、日替わりで男連中も料理をすることになった。そして今日は男子の日だ。

 トマーゾは鼻歌まじりにエプロンを腰に巻いている。

 

「後はミケとお袋にまかせとけ。女の扱いは女が一番良く知ってるからな。直ぐに仲良くなるさ」

「だから心配なんだってば」

「なんだ、彼女なんだろ?家族に紹介するのが筋ってもんだぞ。恥ずかしがってどうすんだ」

「違う、根本からして完全に違う」


 大きなムール貝を手に取り、金タワシでガリガリと洗っていく。

 話しながらも、調理の手は止めない。二人とも、父親からゲンコツを喰らいながらおぼえた調理の基本を忠実に守っていた。下ごしらえが終わって窯に突っ込むと、その間に蛸の足をブツ切りにする。

 チーズとバジル、オリーブオイルを混ぜてジャガイモを咥えたら前菜の完成だ。メインは豚肉のローストだから、邪魔にはならないだろう。

 ローストはトマーゾに任せ、イオリは適当にサラダを作っていた。


「それで、お前の彼女じゃないとすると、本当のところはどうなんだ。親父の研究を嗅ぎ回ってる奴らと関係は?」

「関係は無いと思う、けど」

「けど?」

「気になる事はあった」

「おい」


 振り向いたトマーゾの顔は真剣そのものだ。イオリ同様、トマーゾもまた父親を敬愛していた。その父親が晩年研究していた内容をこそこそ嗅ぎ回る連中がいる事を知った時は、イオリが引くほど激怒していた。


「危ないから包丁向けるなよ、兄さん。ユノンさんが、そういう目的で近づいてきたとは思ってない。気になるってのは、彼女とオルタの事なんだ」

「オルタが、どうかしたのか」


 イオリは『カーク10』が着水した後に起こった出来事を詳細に語る。彼が見たこと、感じたことを委細漏らさず伝えると、トマーゾは腕を組んだまましばらく考え込んでしまった。ようやく口を開いた時には、全ての料理が完成していた。


制御術(プロセッソ)か、俺も見たことは無いな。もし本物だとすれば未登録の制御術士(プロセッッサー)って事だよな。国内に四人しかいない制御術士(プロセッッサー)は全員男だったからな」

「そうなるね」

「まあ、あんまりかかわり合いたくないけど、親父の研究をどうこうする奴じゃなさそうだから良しとするか」

「うん。むしろ父さんが生きてたら」

「協力してくれって頼み込むだろうな」

「それで母さんに箒で叩かれる」

「ははは、違いない」


 兄弟で大笑いしていると、ミケーラから料理の催促が飛んできた。

 慌てて配膳に向かうと、そこにはすでに出来上がった義姉と頬を朱く染めたユノンの姿があった。テーブルの上に転がったワインの瓶を確認した後、母親のハルナに非難の眼差しを送るが、我関せずといった表情でつまみのオリーブをつついている。


「ユノンさんの年齢聞いてないけどさ、未成年だったら飲酒はまずいんじゃないの、兄さん」

「俺は知らん、無実だ」

「夫婦でしょ、妻の失態は夫の責任。ちゃんと指導してよね」

「ああなったミケには何を言っても無駄だ」

「そこ、威張るところじゃないから」


 ミケーラは、強く無いのにお酒が大好きだ。

 そして、愛くるしいマスクで周りを巻き込んでいき、先に潰れる。危険きわまりない。外では絶対に飲まないようトマーゾからお達しが出たせいで、その分思い切り家で飲むようになった。その様子はさながら陸の嵐である。


「こらぁー、男同士で何してるんだー浮気かコラぁー。こっちに来てお酌しろぉーぶっ潰すぞぉ」

「兄さん」

「すまん」


 大きなため息が二つ、同時に漏れた。

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