10.空気さん
(は、はわわぁ…)
僕がいる部屋から男と女の話声がする。
目と目を合わせてはいけない、
だから相手の顔はわからない、僕は隅で彼らが帰るのを待つしかなかった。
「お?これが足かな?」
ココアのお使いをしに廃墟と化した孤児院の御婆様の部屋で足を発見した時だった。
複数の足音が此方へと向かってきていた。
物取りか?うーん、出会ってわーわーぎゃーぎゃーするのはいやだなぁ、でもこの部屋に来るわけないし…うーーん
もしもの為に隠れた方がいいな!
「そうと決まれば早速…」
懐に発見した足を丁寧に
入れ、後から杖を取りだす。
「…………」
杖を床にトントンとリズムよく叩きながら魔力を流し、詠唱を始める。
「あなたは空気、僕も空気、
心地よい風、僕らは目に入らないもモノ
僕らは捕らえることも出来ない気難しい風の子と
哀れな追跡者。
さあ、かくれんぼをしよう!」
詠唱を終えると、僕の体はうっすら透明になる。
もちろん、周りは僕を空気として見る。
姿は目と目を合わせない限りバレることはない。
次の瞬間、
ガチャリ、と、足音の主が入ってきた。
(……危なかったぁ)
…が、まだ油断は出来ない、
心臓がドクドクと鼓動を大きく音をた立ている。
見付かれば、
最悪な場合…死が待っているかもしれない。
考えただけでも、ゾッとしてしまう。
今の僕には、男女の会話を聞くほどの余裕は無い。
バレないように息を潜めることしかできなかった。
バリッ…
と、何かが破けるような音がする。
少し冷めてしまったパイを食べ時の音に少し近い音だったが、それがなんなのかはわからない。
数分が立つと、男女は部屋から出ていく。
僕は小さく息を吐き、3分ほど待ち、彼らの気配が完全に消えたことを確認すると、魔法を解いた。
「はぁぁぁ、助かったぁぁ!」
大きく深呼吸をしたあと、
彼らの触れた痕跡を散策するため、杖に魔力をリズムよく流しながら詠唱。
「君はピカピカ綺麗な子、人間が触れられた
君は汚い子、汚い子はもう一度綺麗にしよう、
さぁ、哀れな君を
シルクのハンカチで拭いてあげよう」
すると、木で作られた机の引き出しが
音を立てながら僕の手元までやってくる。
(ふーん、この中の物を持っていったのか)
引き出しの中は、透明な膜のようなものが
散らばっていた。
膜のようなものは引き出しにべっとりと張り付いていた、張り付いているのは上のものの重さで付いてしまったのだろう。形をみるに、少し大きな本のくらいだろうか、売れば高値で売れる大きさだ。
(物取りかなぁ?それにしても、この膜はなんだろうか?魔力の痕跡も無いし、呪いでもない、何かの生き物の殻か?それにしては脆すぎる…
なんだろう?家に帰ってお婆様に聞いてみるのが
一番かなぁ)
「っと、その前に、僕の魔力に引き付けられた、魔物たちを駆逐しないと…」
これ以上、お婆様たちの思い出の場所をボロボロにされるわけにはいかないしねぇ。
「今日の晩御飯はなにかなぁー」




