8.もどき
お婆様が変なものを拾ってきた。
帰ってきた僕にナリュシュキは汗をかきながら、
そう言っていた。
その変なものは人らしい。
さては、孤児でも拾ってきたのだろう。と思ったら成人女性を拾ってきたと言う。
お婆様は何を考えているのだろうか?
…直接話を聞きにいこう。
僕がそそれを動に起こそうとした時、ナリュシュキは慌てた様子で「そういえば、ココアがすぐに来いって!ほ、ほら、ココアのところに早く行ってやれよ」などと言われたので仕方がなく外服のまま、すぐにココアの部屋へ向かった。
…コンコンッ
ドンッ!!
ノックをすると、
何かをドアにぶつける音が聴こえた。
「入れ」の合図だ。
合図だと理解し、中に入ると足元には中身が空なガラス瓶が転がっており、どうやらこのガラス瓶を投げつけたようだ。
部屋の奥には真っ白な看板を持ったココアが椅子に座り待ち構えていた。
しかし、ココアの様子が昨日とは少し変だ。
一昨日やっと肉切り包丁が持てたことに感動し、嬉しそうにはしゃいでいたのに。今のココアはげっそりと窶れていた。
我が家の肉切り包丁はかなり年期が入っていて、剣より重いけど……まさか、反動で筋肉痛にでもなったのか…?
「ココア、昨日まで元気だったのにどうしたの?」
返事の代わりに咳き込むココア。
その時、彼が持っていた白い看板に文字がうっすらと浮き出た。
『しゃべりすぎて、のどがしんだ』と。
「…変なもの作ったねぇ。で、呼んだ理由は?」
『おばあ様のコピーを作った。あいてして』
「コピー?」
『そうそう、これ』
ココアは机の上に置いてあるブレスレットを手に取り、白く細い糸のようなものをブレスレットの装飾品であろう黒石に乗せる。
すると、その黒石からか小さな黒い煙が出現したが、気がつけば煙は人の形をしたまるで影のような形になっていた。
顔は無いが、腰、腕、さらには手の先、足指など細かなところまで再現されていたので、思わず拍手をしてしまいました。
「なーに、これすごーい」
『おばあ様のかみの毛のま力から作られたおばあ様もどき』
「へー、髪の毛一本でここまで再現出来るなんてすごいねーー」
『じつはちょくせつ魔力を頂こうとしたのだけれど、おばあ様のまりょくに耐えきれず、ばくはつしさん、こなごなになってしまったので、色々た試したけっか、ー番まりょくが少なかった髪の毛でなんとかもどきを作ることができたのだ』
「へー、僕だったら楽勝かな?」
『…おばあ様のもどきだが、おばあ様の力を使う。
あまり油断すると負けてしまうぞ』
「で、何処で戦えばいいの?」
『うらにわ』
「へー、あんまりやっちゃうとナリュシュキに怒られちゃうから程ほどにやろっか」
おばあ様と同じくらいの小さな背のもどきちゃん。
もどきちゃんはこれから僕と試合することがわかっているようで、剣を煙で作り、両手で持ち上げジャンプしていた。
「やる気満々だね」
『うらにわ行くついでに、飴瓶をおかしべやから取ってきて』
「あ、そうだった」
ココアがドアに向けて投げたであろう、空瓶を持ち上げる。空瓶にはラベルが貼られており、そこには「1」と書かれている。
「ごめんねー、菓子部屋の補充分を買うの忘れてたから飴玉瓶これで最後なんだ。だからーもう無いよー。あ、もどきちゃん行こっかー」
『キシュリュナ…え?』
空瓶を床に置き、ドアを閉める。
中から「え"?!」とがらがら声と物が崩れ落ちる大きな音が聞こえたけど、無視無視。
音に驚き、びくびくするもどきちゃん。
「ん?どうしたの何か聞こえた?」
何事もなかったかのように廊下を歩く僕とドアをチラチラと見ながらもついてくるもどきちゃん。
「ん?」
昨日と今日何が違う…………この屋敷に変なものが本当に入ってきたようだ。
「へぇー、まぁいっか」
害があっても、無くても、結果は同じだからね。




