6.次のステップの前に
彼の剣が落ちる音が静まり返ったこの場で音を立てながら地面に落ちる。
しかし、それはすぐに音は無くなり、先ほどと同じように静寂が生まれる。
彼は驚いていたが、どこか冷静さを感じさせる。
いや、驚きすぎて思考が一周回って固まったのかもしれない。
「大丈夫・・・?」
俺は彼に手を差し出す。
「なんで・・・」
小さく呟きながら、彼は俺の手を掴んだ。
「しょうがない・・・これが、俺だから・・・」
「だからって、弱すぎますよ。先生」
「そうだ、俺は弱いんだ」
俺の言葉を聞いた彼は、悔しそうに顔を歪ませながら地面に倒れている俺を引き起こしてくれた。
上着ポケットに入っているアクセサリーの形をした。魔力補強道具・肉体補強道具を取り出しそれを手の中でクルクルと回しながら、一つずつ耳に、指に、手首にはめる。
「俺は産まれてからずっと、貧弱でな。いつも、人の手を借りなければ自力では立てない。
お前との稽古ではいつも補強道具を付けて相手をしていた。だが、ここ最近お前の相手をしたあと、よく道具が壊れるんだ」
「補強・・・随分高価な物ですね。教師の給料で買える代物には見えませんが」
「あぁ、これ俺が作ったやつ。」
「は?」
「さて、無駄話はこれまで。次のステップに行く、もう俺ではお前の相手をすることは出来ない。だから
俺のこの持てる力を全て使う。これで、まぁ邪神と互角に・・・いや、まぁまぁやり合えるくらいにはなるかもしれないな」
御婆様は言った。
無理はしないで・・・と
あんたが一番無理をしている癖に、そんなことを言った。
最近では、やっと肉切り包丁がなんとか持てた俺だが、あいつらには劣るが、ソウスを強く育てることは出来る。二年で今以上に、育てよう。
そのあとは、まぁあいつらにでも放り投げてしまえばいい。
ナリュシュキは雑だがちゃんと世話をしてくれる・・・が、問題はキシュリュナはちゃんとしてくれるだろうか、そこが心配だ。
「なんで、先生はこんなにも俺に邪神を倒させようと、手助けをするのですか」
「それは・・・」
なんて言おうか、俺は言葉に詰まった。
嘘を言えば、怪しまれる。曖昧なこともそうだ。素直に話したい、それが一番いいの。
「俺は、昔邪神に身体を乗っ取られていたんだ。ただ、それの復讐の為さ」
俺が出したのは、半分本当、半分嘘の回答。思ってもいないことをいうのは、身体がムズムズする。
それと心臓がチクチクと針刺される感覚がする。半分本当のことを言っているのがまた腹が立つ。
とてもいやな気分だ。
「先生も、だったんですね」
しかし、俺の胸糞悪い回答にこいつは、
気分が晴れたように、瞳を輝かせ、仲間が居たんだ、よかった。と可哀想な顔をしていた。
可哀想に、そう思えてしまうのか。
彼の表情を見ていると虐めてしまいたいと口元を引き上げている俺がいる。
「新しい稽古の前に、ちょっと息抜きしていきなよ、君の妹と一緒に」
御婆様。申し訳ありません。
俺は悪い孫です。こんな非道なことをしているのに、今とても、楽しいんです。
「良いところを教えてあげるよ」
貴女が最も嫌う出来事が起きてしまう引き金を引いてしまうのだから。




