5.勝負しよう
目の前の君を見てるとよく、馬鹿げた自分の考えを思い出す。
純粋な心はどんなに魔術を自在に操ることが出来る天才でも、それに敵う者はいない。
俺はそう考えた。
魔力は人の命の源、源は身体と一体化。
つまり、身体に何かあれば精神に何かあれば
それは、魔力にも影響する。
…まぁ源とか言っているが魔力が無いからと
言って、死ぬとかそんなことはない。
精神が不安定になれば、魔力を使用する際に乱れが生じる。
その乱れは運が悪ければ、その人間は死に至る。
また、心が汚れ、濁れば、魔力は自由自在に操ることは出来ない。
純粋な心は一つのことに関心を持ち、集中し、魔力を使う。が、汚れることによって、その人間は他のことにまで意識を飛ばし、一つではなく、二つ、それ以上のことを考え、利益を得ようと考える。
その結果、魔力を使用する際、他のことにまで意識を持ちながら魔力を使うことは、純粋にただ一つのことの為に使うものよりも、遥かに衰えるのだ。
悪巧みを考える大人よりも、そこらの市民から生まれた子どもの方が断然、魔力も、操る力も、
魔力の美しさも上だ。
ただひとつの事に夢中に、そのことにしか目がいかない、美しく儚い無知で純粋な子どもは、俺はそれがこの世界で一番強い者だと考えている。
だから、
「俺と勝負ですか…?」
どんなに君が歳をとって、もう子ども扱いされない歳になっても君の夢はたった一つ、その夢の為に今、必死に強くなろうとしている。
「俺が勝ったら…良いことを教える?なんですか、良いことって」
その夢のお陰で今の君は出来ている。今の君は少しでも傷をつければ直ぐに壊れてしまいそうな純粋な心。その心を丁寧に我が子だと思い、触れなければいけない。
これも全て、彼女の為。
彼女が俺の中にいたとき、彼女の記憶がよく頭の中に入ってきていた。
彼女は約束の為に、彼が平和に暮らせるように邪魔者を排除している。
己の身を少しずつ壊しながら…。
「お前には、俺の全力……何も頼らない…俺の本当の…………力、見せてやる」
学園を辞めた俺が、呑気に廊下を歩いているとあの生徒が人目につかないだろう暗い校舎裏でそいつは練習用の剣で一人、稽古をしていた。
…そういえば、こいつのこと忘れてた。
学園を辞めた俺はもうこいつに会う機会は無い。
今のこいつはまだまだ弱い、あのクズ校長にまあまあ惜しいが殺されるだろう。
このまま学園という、甘ったれた組織に彼を置いておけば彼は己の才能を開花させずに、きっと腐っていくだろう。
…………だから、こそ
ここで俺に勝ち、次のステップに行かなければ彼は夢を叶えることはない。
稽古場から、練習用の剣を一つ拝借した俺は彼に勝負を申し込んだ。
先程まで汗をかきながらも涼しい顔をしていた彼は俺の言葉に戸惑い、困惑した顔をしている。
大丈夫。
純粋な君は、淀んだ俺に勝てる。
「はじめよう」
次のステップへ…………




