47.墓石と血
一部間違いがありましたので、訂正しました。
「あなたのことが・・・すきです」
「私の恋人になってください」
幽霊が俺に告白をした。
いや、影があるがうっすらとしか姿しか見えない若い女の子が俺の手を握る感触がある。彼女は実在している。そして、初めて見るはずなのに、俺は彼女のことを知っているような感じがした。
頬を赤く染めている彼女の姿を見ていると顔が熱くなる。
ー俺は、
返事を待つ彼女に向けて、俺の気持ちを伝えなければいけない。見ず知らずの彼女、けれど俺の体は彼女との出会いは初めてでは無いと言っている。容姿はそこらにいる女子よりも可愛い、肩まで伸びた赤髪、宝石のようにキラキラと美しく輝く大きな紅の瞳・・・が、彼女は透けている。人間の形をした何かだ。
姿は人間だ。 「姿」は、
ーいいのか?俺。
人間ではない何かだぞ?
返事のない俺とそれを待つ彼女、が突然彼女は一瞬戸惑いの瞳をした。けれども、それを隠すように瞳を閉じ、俺に向かって笑いながらも彼女の震える手はぎゅっと少し強く俺の手を握ると、そのまま俺の方へと倒れるように押し倒してきた。
「え」
次の瞬間、戸惑う俺の心情はそれによって消えた。
グチャァ……
「なんで!?なんで、出来っこないことをするんですか!」
「いやいや出来たからって!そんな顔しないでくださいよ、もーだーーかーらーーー!!」
隣が騒がしい、いつの間に俺は寝てしまっていたのだろうか、重い瞼をゆっくり開けると、森の中だろうか草木が一面に広がっていた。
「あ、おきた?」
今の俺は何かひんやり、冷たいものにもたれかかるように雑草の上に座り込んでいた。そして、あの白金の髪を持つ少女が隣に座っていた。
「ごめんね、一週間前の記憶曖昧にしてしまって、さっきちゃんと戻しておいたから」
「はぁ」
一週間前の記憶・・・あぁ、さっきのあれか、あれが一週間前の・・・
赤い髪の彼女は死んでしまったのだろうか?
起きて間もない俺の脳はゆっくりゆっくりと活動を始めていく。ぼーっと、自分の話を聞いていない俺に少女は俺を見ながら、いや、
「君に告白をしたあの女の子の名前は、カーリーっていうの。・・・そして、」
俺の後ろを見つめながら
「君がもたれかかっているそれは」
俺は、彼女の言うそれを反射的に見た
「カーリーの墓石」
それはおれが知る墓石とは少し違った形をしていた、そもそもそれは石ではなく氷だった。
その墓石に触れてみるが、俺の体温で一向に溶ける気配のない不思議な氷だった。なにか文字のようなものが描かれている、知識力の低い俺には全く読める訳がないのに気が付けば、口に出していた。
「カーリー=マナイ・・・」
周囲を見渡せば、草花の他にも同じような墓石が複数存在していた。
森の中にしかも溶けない氷で作られた墓石が一つではなく複数も。
「これは、一体?」
「私の子ども達のお墓、えーと六年前かなぁそのくらいに身体が無くなってしまったの」
「身体が無く・・・?それは死んだということですか?」
待て、待て待て、ちょっと待てや、この俺より年下っぽい彼女が子どもを?しかも、一人二人じゃないぞ、一体何歳でこれだけの子どもを産んだんだよ
「ううん、死んでない。身体は無いけど、せい・・・」
唐突に彼女の言葉はピタリと止まる。不思議に思った俺は彼女の様子を窺がおうと顔を近づける。
「がはっ」
・・・え?
青白い顔色をした彼女の口から、大量の血液が吐かれる。赤黒い血液は彼女のシンプルな白いシャツ、青いスカートに付着し、徐々に汚していく。しかし、これは・・・
「量がやばい!!!?」
「オロロロロロッ」
やばいやばい!もう水たまりがいや、血たまりが出来てる!?なんで、なんでこうなったんだよ!!
こういう時はどうするんだ!肩を揺らす?背中を叩く?手を繋ぐのか?!
「あ、いつものことなんで、大丈夫ですよ。タゥロ君」
「え、ホント?」
血を吐く彼女の後ろから、彼女とは違う若い女性の声が聞こえるが、そこには女性はいなかった。一匹の巨大な黒い大蛇がこちらをじっと見つめていたのだ。
「あ・・・」
あの口が開けば、俺は丸飲みにされてしまうのでは無いのかと思ったが、彼女の瞳を見ていると別のことが頭の中に溜まってくる。
「カーリーちゃん?」
「・・・はい」
彼女は一瞬驚いたように目を大きくさせたが、柔らかい微笑みを俺に向けてくれた。
「俺、その、君のあの告白の返事だけど・・・」
「はい」
彼女の姿は蛇だ。でも、俺には彼女の姿がありのままの本来の彼女の姿に見えている。
言わなければいけない、立ち止まってはいけない。例え、人ならざるものだとしても言わなければ。
「俺は・・・!!」
己の気持ちを正直に、いけ
「好きだ!五年前からずっと、君の視線は恐怖だったけど、気が付いたらそれが嬉しくて頬が緩みそうになる!先生が作った弁当だと思ってたけど、視線の子が作ったものだと思っていた!弁当すごく美味しかった!!君の姿を初めて見たとき俺は落ちた!!もちろん今の君も素敵だ!君は俺にとって運命の令嬢だ!例え、君がどんな姿になっても、俺は君を必ず見つけて、愛する!!だから、」
「俺と」
「オロロロロロッカー・・リ今日の、りょ、うやばい・・・」
「ぎゃー!?お母さん大丈夫!!今日なにしたのよ!この量は最高記録よ!」
「つきあって・・・・」
「影移動と、き、おくと、あっこうちょ・・・が」
「はぁ!?またおのおっさんが!!お母さんの負担を考えずにあの野郎!!」
「くだ・・」
「おうち、かえ、ろ・・・もうむオロロロロッ」
「お母さーーーーん!!!」
「さい・・・・・」
ごたごたになって全く聞かれていなかった俺の告白。
パニック状態の彼女。
森の鳥たちのまるで俺をバカにするかのような鳴き声。
血をこれでもかと吐く彼女の母親?
そして、地面に生えていた草花は赤く染まり、周囲から緑が消えたのでありました。




