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46.合う

最初は恐怖だった。


周囲を注意深く探しても、それの主は何処にもいないのだから。

それに慣れてきた時だった。謎が多い保健室の先生こと、コシュリュコア先生が布に包まれた何かを俺に手渡してきたのだ。戸惑いながらも、渋々受け取り、結び紐が絡まらないように慎重に解いていく。

紐を完全に解き終わり、俺はゆっくりと布に包まれているそれを取り出し、それを見た俺は次に先生の方を向いた。

「先生が作ったのですか?」

「違う・・・ある女からの贈り物だ」

布の中にはそこらによくある弁当箱が入っていた。







「タゥロ先輩」

何も考えずにただ廊下を歩いていると、前から後輩のジェルアディーユが俺の名前を呼んだ。

「よお」

「卒業おめでとうございます」

ジェルアディーユは俺に向けて、そう言った。あぁそういえば今日、俺は卒業したんだった。

 重大なことなのに、全く実感が湧かない。多分今朝、一週間何故か校長室がボロボロに崩壊してたらしく、更に行方不明の校長。その校長の右腕が近くの森の中から発見されたらしい。そのため、卒業式は数分終わり、本来は卒業式だったはずの時間は校長捜索の時間に変わった。

あれから数時間は経っているが、未だに校長の痕跡は見つかっていないらしい。

ついでに、俺も一週間前次の日になるまで行方不明だったらしい。その日の出来事は全く覚えておらず、両親曰く、何処かで頭をぶつけて、のびていた俺を親切な人が家まで送ってくれたらしい。

「卒業したっていう感じがしねぇ・・・」

「先輩は卒業しました」

「うっ」

小さく呟いた筈の言葉にジェルアディーユはツンとした声で俺に現実を見せる。

 あぁ、そういや俺は卒業したあとのことを全く考えていなかった。全くだ。実際ことを言うと卒業出来るかどうか俺は危ういところにいた。武術や剣術は良いが、それ以外が酷すぎたからだ。

これからどうするか、頭をぐるぐる回転させながら後ずさりをした。剣術も魔術も頭も良くて、顔も良いジェルアディーユから離れないと俺の精神が危ないと思ったからだ。

 一歩後ずさりした時、何かにぶつかった。

「あ、すいま」

「先輩っ!!?」

俺の後ろに偶々いた人にぶつかってしまったのだと謝罪をしながら、後ろをゆっくりと振り向いた。背中を向けている俺よりも早く後ろにいる人の姿を目撃したジェルアディーユの怒鳴り声と共にその人の小さな声が聞こえた。

「こんにちは、私は貴方宛ての手紙です」



 愛らしく、冷たい声が気が付けば耳元で囁かれる。振り向けばそこには、小さくも大人らしい体格、顔つきを持った少女がいた。それだけなら良かったが、灰色の瞳を持つ彼女にはあり得ない、白金色の髪の毛先は黒く濁っていた。少女の足元から煙のような黒い何かが俺の周りに浮いていた。そして、その煙は俺の腹部に巻きつくと、ゆっくりと俺を宙に浮かせた。反抗しようと思ったが、目の前にいる独り言をブツブツと呟く彼女の姿を見て頭の回転が停止してしまった。

 ただ宙を浮いている俺の耳には、男女の悲鳴、ジェルアディーユの怒鳴り声が聞こえた。

「インフェルオヴィンッ貴様何故ここにいる!先輩を離せ!!」

「うるさいなぁ、俺さーこれの使い方わかんねーから、間違って殺しちゃうかもしんないしー」

少女の姿とは似ても似つかない言葉使い、彼女は俺を拘束しているそれを見ながら、ジェルアディーユを煽るようにケラケラと笑う。

「死ね」

ソウス=ジェルアディーユは殺意の籠った瞳で黒い剣を素早く抜き、そして目にも止まらぬ速さで少女の首筋に剣先を向け、そのまま押し込もうとした時。


剣先を向けられながらも少女は笑った。






「目と目を合わせちゃったね」






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