45.実は…
お腹空いたろ?今からご飯貰ってくるよ!
キロ君はそう言うとドアを開けて何処かへと飛び出していった。
昔のキロ君は物静かで、クールっぽい子だった。でも、今のキロ君は何だか明るく、表情が柔らかくなっている。まるで、ジャファー君のように……。
「…………」
彼らは彼女に殺された。
キロ君はそう言った。
本当にそうなのだろうか?
本当にキロ、カーリー以外の子全て、彼女が殺したのか?
コンコンッ
ドアをノックする音が部屋中に響き渡る。
そして、私が返事する前にその人は部屋へと入ってきた。
そこには、姿形全く変わっていないコシュリュコアの姿があった。
「おはよう」
「…コシュリュコア」
「あー、今ね。五年前、貴女が俺にしてくれたアレは契約を解除をしていないから。俺は貴女と同じように時が止まった存在になってしまったんですよーだから、俺まだ23歳」
長かった髪は何故か肩までの長さになっている彼は両手に何か布に巻かれた細長い物を持ちながら私の座るベットの側に置いてある椅子に腰かける。
契約…あぁ、一心同体のことかぁ…………
あれは、治したら終わりじゃなくて、解除しなきゃいけないのか…………。
解除の仕方は何となくわかっている。
彼と私を繋いだ行為をもう一度すればいい。
私は直ぐに椅子に座る彼の頬を両手で包みそのまま額に口を付ける。
彼の中に入っていた私の一部が戻ってくるのを感じる。そして、彼の中にあるそれは消えた。
「はい、解除したよ」
私はゆっくりと額から口を離し、手も離そうとした時だった。
「…恥じらいも、後悔も、赤らめることも何も無く直ぐにやってしまうなんて、貴女はどうしたのですか?何故そんなにも、苦しそうな顔をするのです?」
彼は私の右手を握る。
彼は真剣な眼差しで私を見つめるが、何処かの悲しそうな瞳をしていた。
どうして、彼は私にそんなことを聞くのだろうか。私はいつも通りなのに…何故、彼は悲しそうなの…?
「わからない…」
ポツリと、私は呟くと彼はため息を一つする。
そして彼は私の隣に布に巻かれた細長い何かをゆっくりと置き、静かに出ていった。
『お前、蝕まれてるぞ』
校長先生は私の体を見て、言った。
今の彼は、あの時のままの姿で、私以外の人には見えない存在になっている。
幽霊のようなものだ。
私は自分の体に目を向けた。が、何もなかった。何もないと、校長先生に伝えると。違う服を脱げ、彼がそう言ったので私は恐る恐る袖を捲った。
「あ…」
そこには、赤い糸が私の腕にぐるぐると巻き付いていた。
腕だけではない、足にも、腹にも、首にも巻き付いていた。
『お前、カルルラスに呪われてるな』
「へぇ……」
とても、重大なことを言われている気がしたが、どうでも良いや…………。
ふと、窓に目線を向けるとそこには私の三人の子どもがいた。私の目線に気がついたのか、三人は嬉しそうに私の側まで駆け寄り、抱き付いてくる。
怖かった、でも、ぼくたちはなんとか助かったよ。がんばったよ。
まぁもし、死んでも。また、ママの子どもとして産まれたいけどね。
と、私の子どもたちは褒めて褒めてと、私からご褒美を貰うのを待っている。
「偉いね……」
三人が欲しているご褒美は何なのか分からないが、私は頭を撫でようとした。
『ママと鬼ごっこしたこと、ママとご飯を食べたこと、ママと出会えたこと』
突然のことでした。
校長先生が何かを朗読し始めたのは。
それは、まるでお願い事を書いた紙を読んでいるかのようなものでした。
私には、それは一体なんなのかわからなかった。けれども、停止しかけていた脳がその言葉を聞いた途端、熱く、重く、苦しくなり、瞳は大きく見開いていき、そして…
「ロリエ…ちゃん?」
私は無意識に呟いた。
校長先生の方を向けば、彼はコシュリュコアが持ってきた布に巻かれた細長い何かの棒をジッと見つめ、口を開く。
『ママに私たちの作った服を着てくれたこと、ママとこの街に来たこと、ママと出会えたこと』
「メリーちゃん…」
『母ちゃんと会ったこと、母ちゃんの不味い飯を食った後の皆の顔を見たこと、母ちゃんと遊んだこと』
「カナット君…」
『ママの子どもになれたこと、ママとお花で遊んだこと、ママと出会えたことがうれしかった』
「あ…あぁ、ノノちゃ…ん…」
『キロが無愛想なりに母さんに色々やろうとしていたところや、母さんに会えたこと、母さんがここの学生をボコボコにしたところとかかっこよかった、キロと母さんが仲良くしているところが一番嬉しいなぁ』
「…………ジャ、ファーく…ん」
私は校長先生が見つめている、布に巻かれた細長い何かの棒を取り、布を取る。そこには、五年前に私が購入した、はずの大きな木で出来た魔力の無い石が埋め込まれていた杖だったものだったのに、ここには、色とりどりの石が九個ほどはめ込まれた美しい杖へと変わっていた。
よく見れば、その杖は亀のような顔をした持ち手、その下にはぐるぐると四匹の蛇のようなものが巻き付いていた。そして、それぞれには目があり、そこには色とりどりの石がはめ込まれていた。一つ一つ色が違い、よく近くで見ると、何かの文字がじっしりと書かれていた。
『その字は、お前の子どもの字だ。どうやら、その石の中にはお前のガキどもの魔力が込められているな。まぁ、つまり、その杖らあいつらの遺品ってことかな?』
「あ……あぁ」
校長先生は、この石に書かれた文字を朗読していた。私がこの世界の文字を知らないから、きっと彼は私のために読んでくれたのだろう。
この石にはあの子たちの思い出が書かれている、人それぞれ違う思い出だが、一つだけ、一つだけ皆統一しているものがある。
『めぇ醒めたなら、さっさと呪いを殺してこいよ』
「うん」
先ほどまで、目元がとても熱く、涙が溢れそうだったが、今は何故か何もかも吹っ切れた気分だ。
だから、今まで溜めていたものを吐こうと思い、実行した。
「…………私は、はっきり言って子どもが大ッ嫌いだ!!」
そう、私は子どもが大嫌いだ。
子どもを見るといつも鳥肌が出るほど。
『え?』
「いつもいつも、私が嫌なことをどんどんやってさぁ!私が怒るとそのガキの親が来て私を怒鳴るわ!!ガキどもは私を嘲笑うし!も″ーーー!!!なんなのよ!、あ″あ″ぁ!思い出すだけでイライラするじぃ!!
あれから私、ほんと!ガキ見るだけで眉間にシワ寄るし、鳥肌だって立つんだから!」
顔を赤くし、ベットの上で手足をバタバタと暴れながら、わめき散らす私。
…………けれども、
「…あーでも、あの子たちを最初見た時は眉間にシワは寄らないし、鳥肌だって、立たなかったなぁ……あの子たちのお陰で私の子ども嫌い、何処かにいってた…」
楽しかったなぁ…あの頃は、
思い出に浸りながら、私はゆっくりと影から神器を取り出した。
「しかぁし!!、私の子どもは違うぞ!お前ら突然私の子どもになって、私にベタベタしやがって!!なんで私が、なんでまだ十八の私が!!子どもを三人も産まなきゃいけないのよ!「またママの子どもとして産まれたい」?こっちはお前みたいな親離れしないガキなんかいらねぇよ!!」
ビクビクと、涙目になりながらこちらに目を向ける三人の子ども。
私は歯で腕に絡み付いた大量の赤い糸の一つ束を噛み、そのまま引っ張り伸ばす。
そして、その伸ばした糸に神器で思いっきり切り裂いた。すると、一人の子どもが苦しみ出す。どうやら、子どもはカルルラスの呪いから出来ていたらしい。
でも、確か私はカルルラスをちゃんと倒したと思っていたけど、倒したあとも呪いは続くものなのか…。
「♪~♪~」
スパスパと鼻唄を歌いながら子どもがもがき苦しむ声を聞いて、糸を次々と切っていく。途中、校長先生から「もうやめて」と言われたが私はやめず、段々と気楽な鼻唄を歌いながら切っていく。
「ふ~ふふ~んっと、」
バッサリッ
最後の一人、の悲痛な叫び声を聞いた後、私はもう糸が無いことを確認した。そして、無いことがわかると、影からこの世界に来たときのあの服を取り出し、今着ている服を脱ぎ捨てる。
『お前、怖いな…』
「え??…まぁ、色々とすっきりしたところで、」
「娘のプロポーズ大作戦実行しますか!!」
とてもかっこいい杖を高く持ち上げながら、すっきりとした顔をした私は娘の為に大作戦を実行するため、メラメラと燃えていた。
『は…はぁ』




