キロ君2
今俺たちがいるここは、あの三人の新しい家。
五年前、母さんとここの長男以外である場所へ向かった。
それは競技場、ただの競技場ではなく勝者には名誉として騎士団幹部の地位を贈呈し、さらに屋敷も付いてくる。
きっと、あの二人は母さんと長男がのんびり気ままに暮らすためにと参加した。兄貴がまたあんな目に合わないようにと、思った行動だろう。その結果あの二人は見事優勝し、整備やらて手続きなどのせいで五年もかかってしまったが、こうして住むことができている。
死にかけのロリエと肉体の無いカーリー、泥のようにどっぷりと眠った母さん、さらには男ども。流石に俺一人ではこいつらを運ぶことは出来なかった。どうしようか迷っていると、「やっといけたー」「よお」と呑気にあの二人が現れた。
なんでも、ロリエが首にかけていた時計擬に探知機を長男が仕掛けていたらしく、それを頼りにココまでやって来たらしい。
二人のお蔭で俺達はここに来ることができた。
一人を除き、男どもは今もこの家の何処かで未だに眠っているらしい。
精神しかないカーリーとロリエは俺の手の中で何処かに飛ばされないようにじっとしていた。
早く母さんが目覚めれば、二人の器は出来る。
それに、母さんにまた会える…………
俺はずっと、眠り続ける母さんの部屋の片隅でじっと、母さんの目覚めを待ち続けた。
待ち続けて、五日後
母さんは目を醒ました……が、
その前に、目覚める前に、
「今度はママの本当の子どもとして産まれたいなぁ……」
そう母さんそっくりな笑顔で、ロリエは息を引き取るように静かに消えていった。
もう少し母さんが早く目覚めれば、ロリエは助かったかもしれない、あともう少しロリエが耐えてくれれば、助かったかもしれない。
しかし、結果は助からなかった。
母さんはこの日から変化が起きた。
カーリーの体を作って貰おうとしたが、何故かカーリーの体、いや、俺達を入れる器を作ることが出来なくなってしまったのだ。
なので、元からいた蛇の形をした影一つの中にカーリーを入れることにした。
入れるかどうか、不安だったが。安易に入ることができた。
母さんの変化はもう一つある。
それは、
「あぁ、また……聞こえる」
夜、真っ暗の部屋にいると、母さんは虚ろな目で必死に耳を塞ぐ。あとで聞いてみると、黄色の女に閉じ込められたあの箱の中を思い出す。
皆の、助けられなかった、あの悲鳴が、叫び声が永遠に聞こえ続ける。
母さんは苦しそうに笑いながら話してくれた。
俺は思った。
この状態の母さんに、ロリエのことを言うことを。
ロリエは母さんが殺したんだよ。
ロリエが死んだあと、母さんが目覚めたんだ。
これを言えば母さんはどうなるか、想像は出来る。だからこそ…………
<…………無理だなぁ>
虫のように簡単にあっという間に死んだロリエ。そのロリエの死を伝えるのは簡単では無い。
だからこそ、だからこそ……
「……母さん、ロリエやジャファーたちはあの黄色の女が殺した。でも、母さんは仇を討った。だから、ジャファーたちは仇を訪った母さんを恨んでない。大丈夫、それはきっと悪い悪夢だから…………大丈夫だって!」
「……え?」
「なっ、母さん!大丈夫、もしもの時は俺が母さんを守ってやるよ!」
俺は今日から嘘を付き続けるために道化になる。




