44.白金
今、私は何をしているのだろうか…
何だろう…何かを食べている?
よく噛まないでご飯を食べているとよく親に「ちゃんと噛みなさい」と叱られ、噛んだ数を数えながら食べているように……。
口に入れたものが小さく細切れになるまで何回も何十回も噛んでいた。
味はしない、ただ食べていると気分が良くなっていく。そして、何か大切なものを忘れていくような気がする。
あれ…私の手って、こんなに黒かったのかな?
それに、こんなに固そうな手だっけ?
固そうな私の手で、ソレの胸元に手を差し込み固定する。そして、私はもう一つの手でソレの胸元の中にあるものを取り出そうとした。
でも、ソレは反撃してきた。
凄いなぁ…ソレの半分は私に食べられているのにまだ動けるなんて……しかも、まだそんな力が残っていたんだ。
今さら反撃しても、もう遅いのに…
あれ?ちょっと遊んだだけなのにもう動かない……やっぱりどれもこれは味がしない。でも…ソレの中にあるものはとても美味しそうだなぁ……
潰れないようにソッと取り出していると、手に小さく弱い何かが付いた。
……邪魔
すぐに振り払うと何処かに落下した音がした、そして、取り出したものを口に含む。
それは噛むごとに口内に蕩けるような旨味が溢れ、広がっていくとても美味しいものだった。
美味しいものを食べれば嬉しくなるはず…でも、
ーー悲しかった。
目を開けると私は汗をかいていた。
「……あ」
大きく豪華な窓から熱い日差しが私を照らしていた。きっと、あまりの暑さに私は目を覚ましたのだろう。
ここは何処だろう…?
周りを見渡せばキラキラに輝いた新品の家具、見ただけでわかるほどふさふさで寝心地の良さそうな絨毯、そして私が今座っているそれは絹のような滑らかな白く柔らかなベットにふかふかと気持ちが良く、重さが全く無い掛け布団。そして上を見上げればフリル満載の天蓋が……
「は?」
えっと、え?なにこれ、なにこれ??
私が寝ている間に何があったの!?なんでこんなお姫様が寝ていそうなところに私がいるの!?
落ちつけ……落ち着け私…えっと、確か……
た…た、しか……子どもたちが……!
「そうだ、子どもたちは!?」
<母さん…起きたの?>
「!!」
パニックになりながらも状況把握をしようとした時、私が一番聞きたかった声が聞こえた。
「キロ君!!良かった!無事だったのね、ねぇほかの子は!?」
青年になった彼は部屋の片隅に置いてある椅子に座っていた。私は直ぐ様、彼の元へ駆け寄るが…
「あ…」
盛大にベットから崩れ落ちる。それもそのはず、私には足が一つ無いのだから、片足で立てる訳がない。影を義足代わりにいつも使っていたからか、それが当たり前になっていたせいか、私は自分の両足があると勘違いをしていたようだ。
「……?」
ふかふか絨毯のお陰で落下した痛みは無い、痛みは無いはずなのに何故か絨毯が徐々に赤く染まる。
何故だろうか…そう思いながら口元を触るとぬるりっと何かに触れて手が滑る。恐る恐るその手を見てみれば……それは血だった。
「…!?」
そう、私の口から血が溢れていた。
そしてそのことに驚愕した直後、突然口から大量の血が吐瀉物のようにドロドロと流れ、ふさふさの絨毯を汚していく。
<母さん……無理しないで>
「がはっ…」
私の元へやってきたキロ君はゆっくりと優しく私の背中を撫でた。
「あり…が…………」
目線を下に向けていた。だからこそ、そのことを知ることが出来た。
「う……そ……」
私の髪色は毛先は黒かった。でも、サラサラと顔にかかる髪色は絹のように白く、日差しに当たり金のようにキラキラと金色に輝いた。この世のものとは思えない髪だった。




