30.食堂
「見つけた……」
三人組のあの言葉を聞いてしまった俺はどうしてもあいつから聞きたいことがあった
めんどくさいが…聞きたかったことだ
「先生?どうしたのですか、今日の稽古は放課後ではないですか?」
食堂で昼飯を食べようとしていたあの少年を見つけた俺は少年の側まで駆け寄った
「お前…は何のために強くなろうとしているかを放課後までに考えておけ……嘘はつくな…お前の野望を教えろ」
「は?」
少年が俺の言葉に呆然としている間に彼の昼飯の中で一番高価そうな料理を手でつまみそのまま口に入れた
「ちょっと、先生!?行儀悪いですよ!」
「…うるさい」
少年のギャンギャンと俺に説教染みた叫びを浴びせてきたので口を動かしながら食堂を後にした
……子どもたちはもう書けた頃合いかな?とりあえず戻りながら探してみるか
ドンッ
羅針盤を片手に廊下を歩いていると曲がり角から突然生徒が現れ俺とその生徒は激突した
「わぁ!」
「…っ」
激突の衝撃で倒れることは無かったが俺と激突した生徒は廊下に背中をぶつけていた
「……大丈夫か?」
羅針盤をポケットにしまい倒れた生徒に向けて手を差し伸べる、本来ならスルーしていきたいが己の不注意が招いた事故、流石にスルーするのは良心が痛む
「ありがとうございます…」
赤色の髪を持った生徒が顔を上げると顔立ちの良い男性生徒だということがわかった
赤毛の生徒は俺の手を掴んだその瞬間だった
「……っ!?」
何かが絡まり、きつく絞められた感覚が一瞬だったが俺の体を襲った
「…?どうかされましたか」
赤毛の生徒は不思議そうに俺を見つめる
「なん…で…も…ない…」
錯覚か何かかと思ったが生徒に差し出した手ではないほうの手の震えが止まらなかった
…今のは一体なんだったんだ?
俺は先ほどの感覚について考えている矢先に男性生徒は起き上がり何故か俺に向けてキラキラと輝いた瞳でこちらを見つめていた
「…なんだ?」
「あっすみません、なんだか僕の大好きな人に少し似ていて…見とれてしまいました失礼ですが、お名前は?」
「コシュリュコア…保健室の…先生だ」
「コシュリュコア先生ですね!いやぁこんなに美人な先生がいるとは僕は知りませんでした!」
なんだ?こいつ…先ほどから何をはしゃいでいる
さらには美人だと?髪が長いからか…?
「俺は男だ…」
「え、それは失礼しました!」
俺が己の性別を言うと男性生徒は目を見開くと慌ただしく頭を下げた
見た目からして貴族っぽいが…よく安易に頭を下げるな
「で?頭を下げるのは良いがお前の名前は何だ?」
名前を聞いても俺は覚えない、覚える気力すらないそもそも顔も覚える気力もない…ただ聞いてきた癖に自分の名前を教えないのが気に食わなかっただけだ。
「おっと、大変失礼しました
僕の名前はユリウス=カーラントといいます!
どうぞお見知りおきを!!」
ビシッ
ポケットから何かがひび割れる音が聞こえ
そして…
優男のような優しく柔らかい微笑みを浮かべる彼の濁った紅色の瞳がギラリと輝いた気がした




