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5.鬼ごっこ

今回は少し長目です

「あんた、また鬼かよ

チビな癖にトロいんだな」

「あ、はははっ…」

只今孤児院では子どもたち全員で鬼ごっこしています、勿論私も参加させられましたが子どもたちの元気のよさと若いからこその体力…それに比べて私はもう17歳の年を取った女+右足義足ともう遅い遅い、先程から何回も何回も鬼になっています

「何回目だよ」

「…10回は超えたかな?」

草原で体力切れで倒れている私を見下してくるソウス君、もう…ダメ眠たい…草原でお昼寝したいです

皆今からお昼寝しようよ


私は夢の中に入ろうと目を閉じようとするとソウス君が右手を私の目の前に差し出してきました

「ほら、寝るならあっちの木の下にしろ、遊びの邪魔だから木の下まで運んでやる」

「そ、そうだ、ね、ありが、と…」

ソウス君の手を握り立とうと足に力を込めるが全く力が入らずまるで生まれたての小鹿のようで一歩も歩けず、ソウス君にズルズルと引きずられながら木の下に運んでもらった

「あー俺、あんたに触られたから鬼しなきゃいけねーじゃん最悪だ…」

手を離したソウス君は嫌そうな顔をして愚痴を溢すと、そそくさと他の子どもたちを捕まえに行ってしまいました


「あ、悪いこと、しちゃった、かな…」


肩で息を吸いながら木に体を預ける私はボーッと楽しそうに遊んでいる子どもたちを見つめていた

(…私このくらい走っても全然息切れしなかったのに、久しぶりに走るからかな…?)

昔の私だったら子どもたちと同じ速さで長時間一緒に鬼ごっこや追いかけっこができただろう、あと余りにも速すぎて捕まらない私を追いかけてくる子どもにわざと捕まったりしてみたかった

(…今は逆だけど)

先ほどのソウス君のように、わざと遅すぎて全く子どもたちを捕まえることが出来ない私を見た子どもたちが「イオンさん大丈夫?かわるよ」「イオンちゃん、タッチして」「あーイオンちゃんにつかまるー」などと、わざと捕まってくれる子どもたちの優しさと年下の子に気遣いをされているという現状に嬉しさと悲しさの涙がこぼれそうだった


--ギシッ

「ん?」

なんとか落ち着き息を整え終えた時だった、足元から何かが軋む音が微かに聞こえた

今、義足から何か音がしたような…

「こ、こんにちは!」

「?!」

義足に気がいっていた私は後ろから突然知らない男の子の声に驚いた

後ろを振り向くと高価そうな服をきっちりと着こなしている赤毛の優しそうな顔立ちを持つ少年が背筋をピンっと伸ばしながら私を見ていました

「こんにちは」

「…っ!」

私が返事を返すと少年は頬を赤く染めながら目をチラチラさせ、口をパクパクさせ慌てていました

「きゅうはひいてんきでしゅね!!」

「そうですね」

あららっ声が裏返ってる…この子はあれかな、女の人と喋るのが苦手なのかな?

うんうん、私もよく初対面の人と会話するとよく噛んだり裏返ったりしたから恥じることないよ!誰もがやっちゃうことだよ!!頑張れ!少年!!

「と、隣いいですか!?」

「どうぞ」

「!!、ありがとうございます!」

少年は幸せそうに私の隣を座ると話をふってくる

「ぼ、ぼくユリウスっていいます!年は12です、貴女は?」

「私はイオンっていうの、年は17だよ

よろしくねユリウス君」

「イ…イオンさんはどうしてここに…?」

「子どもたちと鬼ごっこしてるの、私は今ここで休憩しているところなの」

「えっ、あっ…休憩中にすみません……」

「いいの、話し相手がちょうど欲しかったから」


よかった…とホッと息を吐くユリウス君、本当は寝たいけど頑張って話しかけてきたもんね、ここで断ったら可哀想だし…しょうがないよね

「イオンさんはここら辺で働いているんですか?」

「そうだよ、近くの孤児院で働いているの」

「孤児院…あっもしかして、カトゥーさんの孤児院ですか?」

「そうだけど、よく知ってるね?有名なの?」

「いえ、カトゥーさんは僕の叔父なんです、たまにその孤児院に遊びにいったりしていまして、今日も遊びにいこうとしていたら偶然貴女を見つけて…それで、話しかけて…みたんです」

おや、カトゥーさんの親戚の方でしたか!どうりで優しそうな顔立ちをしてらっしゃる


「ありがと、じゃぁ話しかけてたんだし、なにか話してよ、面白い話とか今日見てきたものの話とかためになる話とかさ、沢山話くれないかな?私この森から出たことないから、外のこと全然知らないの」

ちょうどこの世界の話が聞きたかったのでユリウス君にお願いしてみると「はい!!」と嬉しそうに答え、私に話をしてくれた





「ーと、この日の僕はなんと門限ギリギリで帰ってきてしまったけど、僕はーーー」

「あっ、ごめんユリウス君…」

ユリウス君の話に夢中になりすぎ、気づくと時間はもう子どもたちがお腹をすかしている、お昼頃になっていたので残念ながら話はそこで中断することになった

「今日はありがと、とっても楽しかったよ」

「いえ、こちらこそ、沢山話せて嬉しいです…で、その…」

「ん?」

「たった数時間でこんなに仲良くなることができたので!その、お互いに二人だけの呼び名を、作りませんか!」

「え…」


それはあだ名というやつですか、良いですね…私あだ名って憧れてたんですよね!実のことを言うとあだ名無かったんですよ、私。あだ名ほしいなーっと思ってたんですよね!!ありがとうユリウス君!

「じゃぁユー君で」

「あ…」

あ、ごめん、本当にあだ名初めてなんでそこまで良いアイディアないです…ユーフォーとかユリたんの方がよかったかな…

「そ、それでは僕はイーさんと呼んでもいいですか!!」

とても嬉しそうだ、よかった…

「うん、わかったユー君」

「ありがとうございますイーさん」





私と新しくできた話し友達ユー君と別れ、子どもたちの元へ行くと鬼ごっこをしていた子どもたちは疲れはてた様子で歩きながら眠たそう目を擦りながら孤児院へと一緒に帰っていきました


その夜のことです

子どもたちの洗濯物を干していると暗い表情をしたソウス君がやってきたのです

「どうしたの?ソウス君トイレ行きたいの?」

トイレかなーと顔を除きこんでみるとソウス君は目をカッと開き

「今すぐに俺に呼び名をつけろ!はやく!!」

と他の子どもたちが起きないよう気をきかせた大声で私に言ってきました

「えっ!?えっ??」

「はやくしろ!!」

「えーーっと、ソー君?」

「そんな安っぽいそこら辺にありそうな呼び名などいやだ!!!」

ひーーーっ!?ど、どうしたのソウス君!?そんなに呼び名欲しかったの??しかも急に?えーーっとどうしよ、ソウス君、私に酷いことよく言ったり、私にいじわるしたりするけど、我が儘なんて全然してこないからなーーー、うーん叶えてあげなきゃなぁ…うーん、呼び名…呼び名…ソウス…ソウ…ス


「あ、そうすけ…ってどう?」

「それがいい!!うむ、そこら辺には落ちていない名前だ」

あ、どうやらご満足なようでスキップしながら部屋に戻っていった…よかった



日本人の名前だけど、いいのかな…




読んでいただきありがとうございます

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