1.墓石を作ろう
〈ねぇ、ママ〉
〈なにしてるの?〉
〈遊ぼうよー〉
〈俺腹減ったー〉
「お腹減ったの?ちょっと待っててね、今からみんなのお墓作るから、みんな後ろで遊んでてくれるかな?」
〈わかったー〉
〈おい、なにする?俺は騎士ごっこ〉
〈なにいってんのよ、ここは鬼ごっこでしょ〉
私が寝ている間に子どもたちは私を森から離れた小さな花畑に運んでくれた、起きた私は孤児院を去るときに子どもたちの肉体を影の中に入れることが出来たので中に入れ、どこか埋葬出来るところを探そうと思っていたがこの花畑はあまり人気がなくこの子たちの墓を荒らさせることはないと思い、影をシャベルのような形にして影が掘っていく
その間子どもたちは花摘や鬼ごっこなどをして遊んでいる
子どもたちに肉体はない、だから
私は影であの子たちの入れ物を作った
他人が見たら、私の影から九の影がゆらゆらと動いているように見えるが、私には顔も瞳も色もあるあの子たちが楽しそうにはしゃいでいる姿が見える
影が九つの穴を堀終えたので、私は一人一人の肉体を一つの穴に丁寧に自らの手でソッと入れていく
あのまま放置することがどうしても出来なかった
せめて、埋葬をしたかった
全員の肉体を入れ、土で埋める
本当は肉体を燃やし骨にして埋めたかったが私は火を出すことは出来ない
出せるものは水と影、水を氷に出来ないかと試してみたところ簡単に氷にすることができたしかも全く溶けない氷だ
あっこれを墓石として使おうかな
「みんなー、今からみんなの名前を墓石に書いていくんだけど名字教えてー」
墓石にはフルネームで書かなければと思い私は遊んでいる子どもたちに聞いてみた
〈私たちに名字ないよ〉
〈そそ、僕はカナットとしか知らないし〉
〈俺らもそうだよな……〉
ロリエちゃん、カナット君、サガ君があっさりとした返事を返しているとカーリーちゃんが何か閃いたらしく、カエルのように跳び跳ねながら両手を振る
〈あ、なら…ママの名字書いてよ!!〉
〈いいね!それ!ママの子どもだもん私たち〉
「ええええ!?」
〈つか、俺たちの最初で最後の母さんになっちまったなー〉
〈あぁ…〉
〈そういや母ちゃん、俺らが選んだ布巻いてくれてるんだ、スゲー似合ってるぜ!〉
そういえば、すっかり忘れていたがこの子たちから頂いたものを身に付け、それを見せようとしていたんだった
〈あ、母さん!ちゃんとズボンはいた!?しかしこのダボダボスカート邪魔だな…ちょっと脱いでよ〉
〈……ヒック〉
〈え…なんでロリエ泣いてんの……っあ〉
〈うわーメトルがロリエ泣かしたーサイテー〉
〈いや、あの…ロリ…エ???〉
〈うわあああぁぁぁん、ママァァァ!!〉
ロリエちゃんが泣きながら私に抱き付く
…もう、ロリエちゃんってば…八歳なのにこんなに泣き虫じゃ駄目なのになぁ
「よしよし、ロリエちゃんのスカートとっても素敵だよー!ありがとね」
〈う、うん!〉
〈なぁキロ、あの石作ってよかったな〉
〈あぁ、とても似合っている〉
〈僕があげた長い布ちゃんと巻いてる!〉
〈ふっふーん、やっぱり私たちの服のセンス最高だわ!〉
〈ママ美人だよ!〉
〈ねぇ、ママ…ノノがあげたそれ……〉
「あ、あーこれ」
ノノちゃんから頂いた布は今目隠しとして使っていた
「ほら、今の私って目と髪の色が違うでしょ?
他の人が怖くならないように使っているの
……ゴメンねノノちゃん」
〈ううん!いいの、ママの役に立ってるなら
ノノはそれで満足してるの!〉
〈それより、ママの髪の毛の色とってもキレイ!
私ぜんぜんこわくないよ!!〉
私は影で氷で出来た墓石を削り、皆の名前を書いた
「本当に、私の名字でいいの?」
〈うん!いいの!!〉
〈ばいばーい私の体ー〉
〈ねえねえ、なんて書いてるの?〉
〈変な文字だね〉
「私の名字は真井って言うのよ」
〈変な名字だなー〉
〈ロリエ=マナイ……良いかも〉
この子たちはもう人間として見てもらえない
この子が見えるのは私とこの子たちだけだ
もしかしたら、この子たちの手を赤く染めてしまうことがあるかもしれない、私が赤く染まってしまうかもしれない
ずっと悩んでいたことがある、カトゥーさんに刺されたときやリチェーコちゃんが刺されたときのこと何故私の服が破けなかったのか、何故リチェーコちゃんは刺されなかったのか
きっとそれはこの子たちから頂いた大切なものを傷つけたくなかったから服にも知らない間に再生能力を付けたのかもしれない、もう子どもたちが無残に短い人生の幕を下ろさせたくなかったからかもしれない……
もう、あの子たちを悲しませたくない
だから私は人を殺さない
あの子たちみたいな子を産み出さないために
私は
「さて、行きますか…皆どこにいきたい?」
神様を食べます




