第1話:初めての朝…その1
「愛音〜っ」
「ん? おはよう、奈美」
名前を呼ばれた愛音は、親友の奈美に、微笑みかけた。 肩で息をする奈美は、愛音の腕を掴んだ。
「狩谷と付き合ったってホントなのっ?」
「奈美…目が据わってる;」
「狩谷との関係はっ!?」
「大介との、関係って?;」
「あ゛ーっ。あたしの愛音が汚されるぅ〜っ!! だいたい、よりによってどうして狩谷なのよっ」
「奈美、とりあえず落ち着いてよぉ…;」
廊下で騒ぐと恥ずかしいのに…////
「あんな遊び人の何処が良いのよっ!! 女なんて取っ替え引っ替えでぇ…」
「俺が何だって?」
愛音の後ろから抱き着いてきた大介。 思わず頬を赤く染めた愛音。
「大介…」
「うっす、愛音♪」
茶髪で跳ね放題の髪に、着崩した制服。耳にはシルバーピアスと、見た目はかなりのギャル男な大介。
「愛音から離れなさいよ、遊び人っ!!」
格好が格好だから、遊び人呼ばわりされても仕方がないのだが…。
「ホームルーム始まるぜ? 行こうか、愛音」
「うん…」
しっかり肩を抱く大介に、奈美は大声を出した。だが、大介は気にする事なく教室に入っていった。
「「なっ……;」」
教室に入った瞬間、盛大な冷やかしの嵐を受けた。 黒板には、デカデカと相合い傘に大介と愛音の名前が書かれていた。
「よぉっ、ご両人vV」
「付き合い初めて、何処までいきましたぁ〜?」
「…………」
「だ、大介…?」
いつもの大介ならば、冷やかしにのって、一緒にバカ騒ぎをするところだろう。 不安になった愛音は、大介の制服の袖を掴んだ。
「いい加減にしろっ!!」
大介の怒鳴り声で周りは静まり返る。
愛音の腕を引っ張って、教卓に上がり、黒板消しで相合い傘を消した。
向き直った大介は、教卓を叩いて、再び大声を張り上げた。
「愛音は、こういうこと慣れてないんだよっ。次に俺達を冷やかしたら、命はないと思えっ!!」
首謀者達は無言でコクコクと頷いた。それを確認した大介は、愛音を連れて席に戻った。
「はぁ〜…」
「愛音♪」
「あ、奈美…」
「あたし、狩谷の事見直しちゃったよ。あそこで何時もみたいにバカ騒ぎしたら、あたしが怒鳴ってたよ。でも、あの狩谷なら心配無用ね」
「うん」
本当は責任感、強いんだよね? 大介は…
その後しばらくしてから、担任が教室に入ってきて、ホームルームが始まった。
――これから少しずつ変わっていこう…。大介に相応しい女の子になるために。