第五話
そして俺達がやって来たのは夢と冒険、スリルと思い出を与える遊戯場、遊園地来ていた。
「いやっほ~~~~~~」
遊園地に来たいと言った姫よりもヒロがはしゃぎまくり飛び跳ねあちこちを指差しては、
「あれに乗ろ~、あっちにも乗ろ~」
と次々に自分勝手に決めていく。
「姫、良いのかあいつが勝手に決めて?」
「私はヒロさんと幸介さんと一緒に楽しめればそれで嬉しいのですので」
「姫がそれでいいなら俺は構わないがあまり調子に乗らせると後で痛い目を見ることになるぞ」
姫はきょとんと目を丸くしている。
「すぐに分かる」
「サフィ、最初はあれだ~」
ヒロが姫の手を引っ張ってこの遊園地の目玉の一つである全長千メートルにも及ぶ巨大なジェットコースターに向かう。そのレールは他のレールを巻き込んでヘビのようにとぐろを巻き、空を埋め尽くすが如く何本も何本も通っている。
ヒロと姫はタラップを上りジェットコースターに乗りこみ始めている所だった。ちなみにあのジェットコースターは普通の慣性の法則だけで動くジェットコースターとは違い、見所の理由となっている加速の為のロケットが搭載されており発進と同時に時速二百キロまで到達しそしてわずか五秒程の時間で最高速度三百キロに到達するという化物コースターらしい、なおこれに乗って気を失わなかった者はいないということだ。
そしてけたたましいベルの音と共にヒロと姫の笑い声が聞こえるがその声を掻き消す様に爆音が轟きコースターが発信する。その時姫の笑い声が悲鳴に変わったような気がしたが多分幻聴だろうと俺は結論付けた。
帰って来た二人は対象的でヒロはうきうきと笑顔で、姫は頬が一気に痩せ細りげっそりとしていた。
「それは何だ?」
俺はヒロが持っている紙切れに気付いた。
「あ~これね。これはあのコースターで気絶しなかった人に贈られる賞状だって。どうせ同じ紙なら紙幣の方が良かったな~」
なんて現金な事を喋っているが俺はそれを無視してすっかりやつれてしまった姫の顔を覗き込む。
「姫大丈夫か?」
「はい……こんな事で……疲れるわけにはいきません……もっと楽しまなくては……」
息も絶え絶えにようやく答える姫、しょうがない。
「おい、リーダー何か飲み物買ってきてやれ自分の分も買ってきていいから」
俺は財布から一枚の紙幣を抜き取りながらヒロに言う。
「オッケー」
自分の分も買っていい、の一言が効いたのだろうヒロは簡単に了承してくれた。
俺はそっと姫の手を取ってベンチに座らせて背中を擦ってやる。
「お気使い……ありがとうございます」
「これくらいどうってことはない」
俺はぶっきらぼうに答えてやる。
「ヤッホーおまたせ~」
以外に早かったヒロが意気揚々と紙コップを二つ掲げて戻って来た。
「ほい、サフィどうぞ」
「ありがとうございます」
「ところで、サフィ次はどれに乗る?十連続回転するのも楽しそうだし、特殊メイクとCGを駆使したお化け屋敷も楽しそうだし、夜にあるパレードも楽しそうだよ」
「ヒロさん、お元気ですね」
「まだ一つ乗っただけじゃない。これだけで疲れてたら楽しめないぞ」
ヒロは元気溌剌。疲れを全く見せていない。
あんな化物コースターに乗ったというのにこの元気、俺はこいつのスタミナこそ化物だと改めて思い知らされた。
「リーダー俺はちょっと席を外す、それまで姫の相手を頼む、くれぐれも使い過ぎるなよ」
俺はそう言って財布を放り投げる。
「どこに行くのチョコ?」
「すぐに戻ってくる、それまでしっかり楽しんどけ」
と言い残し俺はさっさと歩を進める。
後ろから釈然としていないヒロの声と姫の声が聞こえてくるが俺はある一点だけを見つめてそこを目指す。
そこはファースドフード店の裏、外からは死角になって目に付きにくい薄暗い場所、そこで俺は鋭く声を放つ。
「さっさと出て来い!ド素人共!」
俺が叫ぶと同時に建物の陰から黒服に身を包んだ屈強な男達がぞろぞろと出てきた。ざっと数えて八人はいる。