第十三話
―――――――数日後。
PPの事務所でテレビに齧り付くヒロの姿があった。
「ヒロもう少し離れてみろ。目、悪くしても知らないぞ」
「そんなこと言ったってこれからはもう会えないかも知れないんだよ」
「あいつだったらすぐに会いに来てくれるだろうさ。兄貴と供の騎士と一緒にな」
ヒロが熱心に見ているのはニュース番組だ。しかもサフィーがルイーゼ王国の王に就いたというものだ。若干十四歳の新しい王の誕生に世間は注目し、お茶の間を騒がしている。
あの後、閃光が収まった時、勝負は決した。兄の憎しみの剣は二人の想いの前に折れ、砕け散った。
そこからはサフィーと騎士が母親が秘めていた想いをゆっくりと兄に聞かせていた。俺は聞くわけにはいかないのでヒロを連れてひっそりとその場を去った。ヒロはサフィーの事が心配だったのか後ろ髪を引かれるように何度も振り向いていたが素直に付いてきた。
ただ去り際に見えたディリミアの顔にはいくつもの涙が溢れていた。少し離れたベンチで座って待ってしばらくした頃サフィーとディリミアがこちらに向かって来てお礼と謝罪を述べてきた。ヒロは嬉しそうにサフィーに抱きつき目の端に涙を浮かべていた。
ディリミアの首には剣を模したペンダントがかかっていて主の胸元でそれは誇るように輝いていた。そしてそれからは遊園地の壊れたところを修復術で直し、俺は約束通りヒロとサフィーにプリンパフェを奢らされた。
ヒロは空気に混ざる悲しみを振り払うように豪快に笑いサフィーに笑顔を取り戻させた。その光景を見ていた俺とディリミアは二人揃って苦笑いを浮かべるしかなかった。
ヒロの机の上にはプリンパフェをおいしそうに口に運びながら満面の笑みをカメラに向けるヒロとそれを楽しそうに見守るサフィー、その後ろに苦笑いを浮かべる俺とディリミアが写った写真が飾られている。
それが今回、ヒロが得た新しい友達との唯一の思い出となった。
「幸介、幸介来て来て」
いきなり俺の腕を掴んで引っ張ってくる。
「どうした?」
引きずられながら聞くと、
「サフィーが記者会見で私達の事を……」
テレビを見ると、
「私に勇気をくれたお二人に最大の感謝を。
そして頂いた勇気を胸に私はこの国をより良くしていくことを誓います」
瞳に優しさと決意を燃やし堂々と言い放った。
わずか数日でここまで人は変われるのかと感心してしまった。嫌それを言うならあのわずか数時間ですらサフィーは驚異的なスピードで成長していたと言える。
「お二人の働きに称え、騎士の名にこう名付けました」
「背中を託せし者、と」
それを聞いたヒロは嗚咽を漏らしながらポロポロと涙を流し、袖でグシグシと荒々しく拭っている。
「俺達も負けていられないな。サフィーがここまで俺達を信じてくれてるんだ。それに答えるのが俺達の役目じゃないか?」
バッと顔を上げたヒロは少し赤くなった目と泣き跡が残る顔で言い切った。
「当然じゃない。受けた依頼は必ず成功させる。それが私達PPよ!」
「そうだな」
こうして俺達ととある国の王女と結ばれた依頼は形を変えて永遠に続いてく。
一応これで区切りです。
次回作書いたら連載中に変更して上げていくかもしれません。
そのときにはよろしくお願いしますm( _ _ )m