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心が折れたので、二度と元のパーティには戻りません~僻地ではじめるスローライフ  作者: なりちかてる
第1章:鳳は空の青さを知らず(La fenikso ne konas la bluon de la ĉielo)
17/21

第17話 街道にて

 その日は、グリムダールの町の宿屋で泊まることにして、翌日、おれたちは出立することになった。

 前の夜は野営とレイダーたちの襲撃で満足に睡眠時間もとっていなかったので、朝までぐっすりだった。


 既に、アドニたちは朝日が昇る前に、町をあとにしていた。

 おれたちは、街道に沿って、エレミエル王国から北東へ向かうべく、馬に乗って移動をはじめた。

 馬車は、”八月の涼風”のものではなく、町の者から借りたものらしい。

 “八月の涼風”におれを加えた七人が馬に騎乗して、土埃が舞うなかを、ゆっくりと進ませた。


 馬——とは言うが、四つ脚の騎乗用の獣ではない。

 この時代は、脚馬(あしうま)と呼ばれる生物が広く、移動や運搬の手段として広く、利用されていた。


 脚馬はその名の通り、二本の丈夫な脚を持ち、一日中、走り回っても疲れない、頑丈な獣だった。

 全身が羽毛に覆われ、長い首と角を持つ、蛇のような頭部、という外見をしている。

 鞍と手綱、鐙があれば、はじめて騎乗する脚馬でも、おれは御するのに問題はなかった。


 街道は石畳ではなく、ただ、土を踏み固めたものだった。

 リア河の西側では、街道と言えば石畳で覆われ、ところどころに四阿や街道名を記したマイルストーンなども整備されているのだけど、ここにはそんなものはない。


 土を固めただけなので、壊れた馬車の車輪や獣の白骨化した死体、折れた剣などが時々、地面から露出していた。

 それを目にして、おれはいよいよ、故郷へと近づいていることを意識させられた。


 懐かしい——これが、東岸域(オリエンタ・レギオン)の日常、というわけだ。

 ケリオン傭兵領では、定期的に騎士や準騎士、見習いの兵士などが街道を巡回していたが、こちらにはそんなものはない。


 エレミエル王国は比較的、治安のいいところだが、それは町や都市のなかは、ということでしかない。

 町を囲む城壁より外に出てしまえば、自分の身は自分で守るのが基本だ。


 今日は風が強く、上空を雲が覆っている。

 陽の光は直接、届かず、ぎらつく暑気は感じずに済みそうだ。


 馬に乗っている間は、鞍の上で動きに合わせて身体を上下に揺らす程度なので、体力的にも楽だ。

 おれたちは、昼休憩の他に、馬を時々、休ませるなどして、街道をゆっくりと移動していった。

 そして、何事もなく、双陽が西の地平線へと傾きかけ、吹き抜ける風も涼しさを含んで来た頃のことだった。


 リンが馬の脚を緩め、おれの隣へと並んできた。

「そのままで。……囲まれているみたいだっ」

 まっすぐ正面を向いたまま、おれと視線を合わせずに、話しかけてくる。


「ん……あぁ」

 と、おれも正面を向いたまま、頷いた。

 それとなく、気配でおれも察してはいた。


 盗賊団か、あるいは獣か。

 またもや、襲撃者に狙われてしまっているみたいだ。


「どうするつもりだ」

「相手をしてやってもいい——けど、もうすぐ、日が暮れる。あんたの意見は?」

「そうだな。突破して、一気に駆け抜けたほうが安全かもしれないが……あんたは、反撃したいって顔をしているな」


「まぁね。ぼくたちが見逃しても、また他の商人や旅人などを襲うだろうからね」

「……いいさ。あんたたちのやり方に従おう」

「ははっ。話がわかるね。それじゃ——いくよ!」


 ぴしり、とリンが手綱を鳴らした。

 腰を浮かし、脚馬を走らせる。

 隊列の間を抜け、一気に先頭へと抜けていく。


 少し遅れて、”八月の涼風”の隊員たちも、リンを追いかける。

 おれもまた、中腰になって、脚馬を走らせた。

 街道の上を飛ぶようにして、風を切りながら、移動する。

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