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心が折れたので、二度と元のパーティには戻りません~僻地ではじめるスローライフ  作者: なりちかてる
第1章:鳳は空の青さを知らず(La fenikso ne konas la bluon de la ĉielo)
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第15話 襲撃者たち-その4-

 爆音が響いた。

 空き地の中央に、着弾する。


 続けざまに、砲撃が続き、池に命中した砲弾が大量の水を撒き散らした。

 小雨のように、水滴が降ってくる。


 斜面の上で停車していた武装トラックが、車体を激しく揺らしながら、谷間へと移動してくる。

 その屋根に搭載されている砲塔が、こちらへと向けられている。


 あれの直撃を受けても、防護陣は機能するのだろうか。

 試すつもりはないが、今度はこちらが一気に不利な状況へと追い込まれてしまったようだ。


 レイダーが使っていたライフルを奪っても、あの武装トラックには通用しないだろう。

 おれの天賦があれば、足止めぐらいは出来るかもしれない。


 これまでの、繰り返しの生のなかで、おれはずっと結果のわかりきった行動ばかりを選んできていた。

 だから、今のように、これからどうなるのかわからないことに、ある意味、どきどきしていた。


「に……逃げましょう」

 アドニが、おれの顔を見上げ、言った。

 それが、まっとうな意見だろう。


 分散して逃げれば、生き残れる可能性は増す。

 ただし——このなかの数人は確実に死ぬ。


 おれが囮となって、武装トラックの注意を惹きつけて、その間に護衛たちにトラックの内部に侵入させ、制圧させる、という作戦もある。

 ただ、その内容だと、全員助かるかもしれないが、失敗すれば、全員が死亡する危険も大きいだろう。


 と——銃声がまた、響いた。

 どこかに隠れ潜んでいたレイダーたちが、現われたのだろうか。

 しかし、そうではなかった。


 峡谷の底まで斜面を降りきった武装トラックに、銃弾が命中した。

 金属音を響かせて、トラックの表面に火花が散る。

 集中して、銃弾が命中すると、トラックが停車した。


 今度は、空から爆音が響く。

 二度、三度と音が鳴り、そして、煙の花が開いた。

 花火……か?


 赤とオレンジ、それに緑の煙の塊がもくもくと広がる。

 どどど……という音と共に、何かがこちらへと接近してくる。

 ——これは……馬の蹄の音だ!


 また、銃撃の音が響く。

 そこでようやく、トラックが動き始めた。

 屋根の砲塔が敵を探すように、回り始める。


 今度は、少し乾いた、ぱん、ぱん……という音が聞こえてきた。

 また、トラックに命中したようだが、今度のは銃弾ではなかった。

 ピンク色をしたものが、べちゃ!と勢いをつけて、トラックのボンネットとフロントガラスに広がった。


 トラックがつんのめるように、また、停車する。

 さらに、ピンク色をしたものは、屋根の上の砲塔にも命中し、車輪などにも絡みついた。


 粘着弾——というものだろうか。

 そういう武器があることは知っていたが、見るのは、はじめてだ。


 エンジンが、咳き込むような音をたてる。

 が、トラックが動くことはなかった。

 ただの粘着弾ではなく、もしかすると、呪文の力などが封じられているのかもしれない。


 馬の蹄の音は、そうしている間にも大きくなり、そして、視界に武装した兵士たちの姿が現われた。

 騎馬兵というと、”旗を振るもの”の三番隊を思い出すが、こちらは武器や防具など、まちまちだった。


 全員、ライフルを背負っているが、サーベルや小剣、前装式拳銃などを佩き、防具も革鎧をベースにしたものから、鎖かたびら、サーコートなど、ひとりとして同じ装備の兵士は、ひとりもいない。

 騎馬兵たちは、ひとりを除いて、まっすぐ武装トラックへと向かって行く。

 装甲車輪を破壊し、そして、トラック後部のハッチを開くと、馬から降りて、次々と内部へと侵入していった。


 ひとりの騎馬兵が、おれたちの前で馬の脚を止めさせた。

 騎乗したままで、見下ろしてくる。

 兜はなく、金色の髪を三つ編みにして、背中へと流している。

 白を基調としたカラーリングの鎧を身につけ、腰に刀を佩いている。

 切れ長の、褐色の瞳でまっすぐに、おれを見据えていた。


挿絵(By みてみん)


「レイダー同士の仲違い……ではないようだねっ。あんたたちは?」

 澄んだ、綺麗な声でそう訊いてきた。

 落ち着いた声だが、緊張感を全身から発散させている。


「……おれたちは、武装キャラバンの護衛だよ。レイダーたちに襲撃されたので、返り討ちにしたところだ」

 おれは、騎馬の兵と視線を合わせたまま、そう返答した。

「返り討ち! ははっ、そりゃ、いいね。お陰で、ぼくたちの傭兵団にもほとんど、損害は出なかったみたいだね。ぼくは、”八月の涼風”の小隊長、リン」

 はっきりと聞こえる声で、彼女はそう名乗ると、鞍から降りてきた。

 おれをまっすぐ見つめて、握手をしてきた。

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